小学校入学3週間で不登校になった息子。“繊細さん”な彼に届いたのは「怖かったよね」「よくがんばったね」と気持ちに寄り添う言葉だった
Be Patient(忍耐)!
紆余曲折あり、“せんさいなぼく”がすっかり元気を取り戻すのは、およそ1年後。P先生以外にも、数々の出会いもありました。その中で、筆者がとりわけ印象的だったのがO先生です。 「学校も自分で選びたかったんだ。いま考えてるから、ちょっと待って」というむすこさんが選んだ、デイスクールを運営するガーナ人のO先生。あの手この手でスクールに通う楽しみをつくってくれたO先生から、沢木さんがよく言われたのが「Be Patient(忍耐)!」という言葉だったといいます。 子育ては、まさに忍耐の連続です。できないことができるようになるまで、ただ待ち、見守る。それのなんと難しいこと! でも、できるようになる日は、いつかきっとくる。それが今はまだなのなら「Be Patient(忍耐)!」と、O先生は伝えてくれたのです。 「隣の芝生は青い」などといいますが、よその子どもと我が子を比べ、不安に思うことは親なら誰しもあるでしょう。筆者もその一人。しあわせを願うあまり、目の前の子ども自身ではなく、理想の子ども像を追い求めてしまうんですよね。 『せんさいなぼくは小学生になれないの?』は、HSCであるかどうかに限らず、子どもとの向き合い方で大切なことを一つひとつ気づかせてくれました。これから小学校入学を控えているご家族はもちろん、さまざまな世代のお子さんをもつ親御さん、そしていつか親になるかもしれないあなたにも、手にとっていただきたい一冊です。
『せんさいなぼくは小学生になれないの?』(小学館)
著/沢木ラクダ 定価:1,760円(税込) 入学後3週間で小学校に行かなくなったHSC(ひといちばい敏感な子ども)のむすこと親の葛藤を綴る日記ドキュメント。5人に1人いるといわれるHSC=繊細さん。不登校の8~9割はHSCではないか、ともいわれています。学校に行きたくても行けない子どもの心情、共働きの親が抱える葛藤、時代に合わない学校の教育環境……。付き添い登校のなかでみえてきた、学校のいまをノンフィクションライターがリアルに描く潜入記。夫婦が試行錯誤しながら情報収集した、専門家からのアドバイス、不登校支援制度なども掲載。 ■【目次】(抜粋) ・親は教室で付き添いをするべきか ・HSCってなに? ・通いつづければ、慣れるの? ・子どもとの信頼関係、どうつくる? ・放課後の居場所を求めてさまよう ・学校に行きたいのに、行く場所がない ・「大人の正しさ」が持つ凶器性 ・1年遅れの学校探し ・「学校行かない宣言」の真相 ・安心すれば、子どもは自ら離れていく
沢木ラクダ
異文化理解を主なテーマとする、ノンフィクションライター、編集者、絵本作家。出版社勤務を経て独立。小さな出版社を仲間と営む。ラクダ似の本好き&酒呑み。子どもの小学校入学時に付き添いを行い、不登校になる過程を克明に綴った日記ドキュメント(「毎日新聞ソーシャルアクションラボ コマロン編」連載)が反響を呼ぶ。 https://x.com/sawaki_rakuda
ニイミユカ