ED治療薬が処方箋なしで薬局販売解禁へ 価格や副作用など、3大薬「バイアグラ」「レビトラ」「シアリス」の特徴と注意点
3種のED薬のなかで認知度が最も高いのはバイアグラだが、世界シェア1位はシアリス。窪田医師によると「バイアグラ、レビトラに比べて副作用が少なく、今回のOTC化案がシアリスからスタートしたのもその点が大きいのだろう」と推察する。ただし、効き方には個人差がある。 「基本的には患者が希望する薬が処方されますが、泌尿器科の専門医と相談したうえで、それぞれ1錠ずつ試して効き方を比較するのもよいでしょう」(同前) 現状、ED治療薬は処方箋なしでの購入はできないため、「手っ取り早く薬が欲しい」と海外ネット通販を利用する人も多い。 「ED治療薬の個人輸入は右肩上がりで推移していますが、製薬会社4社が実施した2016年の調査では、個人輸入仲介サイトで購入した薬の約4割が偽造品という結果でした。そうした偽造品の服用で生じる健康被害も大きな問題です」(同前)
既往歴に注意
現在検討中の「シアリスのOTC化」は、そうした課題を改善する可能性があると窪田医師は期待する。 「OTC化で正規のED治療薬がより手軽に購入できるようになれば、海外製の粗悪品を激減させることができます。ED治療の専門医が少ないエリアでも購入できるようになり、医療の地域間格差の是正にもつながります」 海外ではED治療薬のOTC化が進んでおり、バイアグラは2014年にニュージーランド、2020年にスイスで承認されている。シアリスも2022年にポーランド、2023年にイギリスでOTC薬となった。 「日本でシアリスがOTC化されれば、バイアグラ、レビトラもこれに続く可能性がある」(同前) 一方で慎重な議論が必要とされるのが、患者の既往歴を販売時にどう見極めるかだ。 「泌尿器の問題で受診する患者さんに対して、医師はカルテにない潜在的な合併症を考慮しながら慎重に薬を処方します。現状、薬剤師さんはカルテを見ることができないので、患者さんの自己申告と『おくすり手帳』に頼るしかありません」(同前) シアリスの添付文書では、「狭心症」、「不整脈・高血圧・低血圧」、「心筋梗塞や脳梗塞の最近の既往歴」などが「禁忌」(当該医薬品を使用してはいけない患者)とされている。シアリスがOTC薬となった場合、「持病を申告せずに購入する人が増えるのでは」との懸念も根強い。ED治療のエキスパートで日本泌尿器科学会専門医の平澤精一氏(マイシティクリニック総院長)もこう言う。 「初めてED治療薬を使用する場合はより丁寧に健康状態を確認すべきです。禁忌とされる狭心症や心筋梗塞などの既往歴があったり、上の血圧が170mmHg超の高血圧、上の血圧が90mmHg未満の低血圧の人が服用すると、急激に血圧が下がって命に関わる恐れがあるからです」 リスクを避けるには、まず医師に相談して効果と安全性を試したうえで、薬に慣れてきたら近所のドラッグストアで購入する、といった利用法が推奨される。また、ED治療薬は不妊治療目的以外では保険診療の対象外となっている。単価も種類によって異なるため、自身の経済状況に合わせた薬選びが必要になる。3種の薬についての特徴を別掲の表にまとめたので参考にしてほしい。
※週刊ポスト2024年12月27日号