なぜ日本女子卓球の躍進が止まらないのか? 若き新星が続出する背景と、世界を揺るがした用具の仕様変更
伊藤美誠、平野美宇、早田ひなら“黄金世代”が長らく牽引してきた日本女子卓球界。さらにパリ五輪後は、張本美和を筆頭にさらに下の世代の選手たちの活躍も大きなニュースとなっている。ではなぜ卓球界には10代の若い新星が次々と誕生し、なぜ日本勢がこれほどまでに世界で存在感を示すことができるようになったのだろう? (文=本島修司、写真=新華社/アフロ)
続々と若手が台頭する日本女子卓球の歴史
日本女子卓球の躍進が止まらない。記憶に新しいのはパリ五輪、早田ひな悲願のメダル獲得だろう。東京五輪ではリザーブだった彼女にとって、ケガのアクシデントも乗り越えた団体戦での銀メダル、シングルスでの銅メダル獲得は日本中に感動を届けた。しかし、これまでたくさんの苦労と栄誉を経験してきた彼女は、まだ24歳だ。 張本美和の大ブレイクも目立つ。パリ五輪後に行われたアジア選手権・女子団体では、ケガの影響も残る早田ひなを温存しながら、卓球大国の中国から張本が2ポイントを奪取。中国に勝って優勝を飾り、世界に衝撃を与えた。もはや日本のエースは早田一人ではなく、日本には早田と張本という2人のエースがいるという雰囲気が漂ってきた。彼女はまだ16歳だ。 早田と同期の伊藤美誠は2016年リオデジャネイロ五輪から、同じく同期の平野美宇は東京五輪からすでに活躍。いまでも世界ランキング上位に名を連ねている。 こうした、続々と若手が台頭する歴史になぞらえるかのように、10月に行われたWTTチャピオンズ・モンペリエでは、大藤沙月が張本美和を破って優勝を飾った。また日本から新しい若手が台頭したと、世界中を驚かせている。翌日には横井咲桜のWTTフィーダー・プリティシュナで優勝というニュースも届いた。 伊藤、平野、早田、張本。そして大藤に横井。他にもダブルスの「Wみゆう」としても知られる22歳の長﨑美柚と20歳の木原美悠ら世界と戦える逸材はここでは紹介しきれないほど。日本女子卓球は本当に選手層が厚い。そして彼女たちには、幼少期から頭角を現していたという共通点がある。 なぜ、これほどまでに日本の女子卓球は続々と新星が現れるのか。幼少期からの選手の育成環境の整備や選手自身の努力の賜物であることは大前提として、さらに、そこには卓球特有の「用具の事情」と、その「規定変更」が強い影響を与えた歴史がある。