なぜ日本女子卓球の躍進が止まらないのか? 若き新星が続出する背景と、世界を揺るがした用具の仕様変更
「卓球は幼少期から」を定着させたメディアの影響力
多くのスポーツがそうであるように、幼少期から「どこまで詰め込み教育を行うか?」というのは大きな問題だろう。 なかでも卓球は、「プロレベルに達するには幼少期からやることが当たり前のスポーツ」と言われてきた。特に中国と日本ではその傾向がある。そして、中国と日本はやはり強くなり、国際大会の団体戦で決勝戦を争うことが多くなった。 中国はいうまでもなく最強の「卓球大国」。卓球選手を国民全体で育成するほどのイメージだ。では、日本はどうか。 日本では、福原愛が「天才卓球少女」としてテレビやマスコミで大きく取り上げられた1990年代頃から「卓球は幼少期から頑張るスポーツ」ということが浸透したように感じる。 2008年には国がバックアップするJOCエリートアカデミーが設立された。国際大会で活躍できるスポーツ選手を育成するための、中・高一貫教育ができる施設だ。この時に真っ先に生徒の募集を開始した2競技のうちの一つが「卓球」だった。ここでも卓球という競技がクローズアップされている。張本智和や平野美宇は、このエリートアカデミーの出身である。 中学1年生から卓球部で卓球を始めて、全国大会でバリバリ戦えるような才能を発揮する子もいる。だが、全国大会でトップクラスまでいけば幼少期から練習を積んだ子どもが圧倒的に多い。それが卓球という競技の現実だ。 こうした一連の流れは、幼少期から競技を始める傾向に拍車をかけた。まず、日本では「卓球は幼少期から」という現象が定着したこと。これが、次々と出てくる1つ目の理由だ。
卓球は日常動作とはほど遠い動きのスポーツ
また、卓球という競技において幼少期から取り組むメリットとして、「卓球は日常動作とはほど遠い動きのスポーツ」という点も絡んでくる。 例えば陸上競技では、高校生から競技生活を始めてオリンピック出場したり、メダル獲得まで上り詰めた選手もいる。一方で、卓球競技を高校生から始めても、オリンピック選手になってメダルを獲得するところまでいくことは、あまり現実的ではない。 「前傾姿勢で、体を回して振り、独特なフットワークも求められる。そして『チェスをしながら全力疾走するかのように』頭脳と体力を振り絞って試合を行う、メンタルスポーツ」 卓球とは、日常動作とまったく違う動きを必要とする競技だからだろう。 卓球の世界では「全国のトップクラスになるには、小学校から始めてももう遅い」と言われているほど。この現象を、良いか悪いかを別とするならば、5歳より前から競技生活を始めていることがまるで当然のようになってきている。