【追悼】東京地検特捜部元検事・堀田力弁護士が語った「ロッキード事件」捜査秘話 「捜査はどこまでいくのか、いつやるのか」田中元総理逮捕の1か月前に掛かってきた電話の主は… 平成事件史(21)
また檜山会長からの具体的な指示についても自供した。 「檜山から、どうしても全日空にトライスターを売り込みたいので、田中総理に頼むのはどうだろうと聞かれました」 「金を総理に渡す役を、大久保君と相談しながらやってくれ。総理から榎本秘書に話がいってるはずだから、彼と連絡をとって受け渡しをするようにと言われました」 (公判記録より) 7月6日、ロスの堀田が、長い交渉の末、ロッキード社幹部の「嘱託尋問」にこぎつけた。 「刑事免責」により罪に問われないことが決まったため、コーチャン副会長やクラッター日本支社長は、事件の詳細を語り始める。 「1972年8月21日に、丸紅の檜山社長(当時)と会い、田中総理(当時)に「トライスター」の全日空への売り込みを頼んだ。成功させるには『5億円』のカネが必要だと丸紅の大久保専務(当時)から言われた。カネの支払先は田中総理である」 (コーチャン「嘱託尋問調書」より) 7月8日、特捜部は全日空ルートの本丸、若狭・全日空社長を偽証容疑と外為法違反で逮捕(有罪確定)した。 7月9日、堀田はクラーク検事らの協力で、コーチャンらへの「嘱託尋問」を終了した。 これにより、特捜部はコーチャンらの「嘱託証人尋問調書」を入手することに成功した。 7月13日、特捜部は丸紅のトップ、檜山会長(当時は社長)を外為法違反で逮捕した。(贈賄罪、外為法、議院証言法違反で有罪確定) 檜山会長の取り調べにあたったのは吉永が、横浜地検から呼び寄せた安保憲治検事(8期)だった。 公判記録などによると、檜山会長は当初、安保検事に対して挑発的な態度をとっていた。 「すぐ釈放してくれ、何の証拠があっておれを逮捕したのか」 「インテリのエリートに何がわかるのか」 しかし、安保が自らの過去を語るうちに、檜山の態度は変わり始めた。 安保は秋田県の農家の生まれで、木こりや炭焼きをやった後に上京し、苦学して司法試験に合格した人だった。檜山は次第に心を開き、ついには田中元総理への「5億円」の贈賄について容疑を認めた。
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