「四季報」を108冊読破した男が教える正しい株価指標の見方…数字が示すほんとうの意味
「株価が割安」と聞けば「投資すれば儲かるのでは」と考えるかもしれません。しかし、バリュエーション「割安」の罠に騙されてはいけません。1冊で2000ページにも及ぶ『会社四季報』を27年間で108冊全ページ読破する渡部清二さんの新著『そろそろ投資をはじめたい。』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けします。 【写真】5年後、10年後に「生き残る会社/消えている会社」を実名公開!
やっかいな誤解に惑わされるな
『会社四季報』個別銘柄ページのNブロックにあるチャートのすぐ横にも重要な情報が載っています。それが株価バリュエーションです。バリュエーションとは株価指標であり、企業の利益や資産と比較した企業価値評価のこと。株価が割安なのか割高なのかを判断できます。 ここには、代表的な二つの指標が書かれています。それが、PERとPBRです。この二つは、基本中の基本の指標なのでしっかり押さえましょう。 PERはPrice Earnings Ratioの略で株価収益率、PBRはPrice Book-value Ratioの略で株価純資産倍率を意味します。 それぞれの計算式は次の通りです。 ●PER(倍)=株価÷1株当たりの利益(EPS) ●PBR(倍)=株価÷1株当たりの純資産(BPS) このPERとPBRは、少しやっかいな誤解を生んでいます。それは、「PERが安い(低い)株を買え」という誤解です。 なぜ、これが誤解といえるのでしょうか。 多くの人が気づけていないのですが、PERには二面性があるのです。それは、「比較指標として見るPER」と「期待値として見るPER」です。ほとんどの投資指南書に記されているのは、「比較指標として見るPER」の話です。その視点では、平均に対して「割安だったら買い」「割高だったら売り」という考え方です。
株価が上がる仕組み
もちろん、指標として見ることが間違えているわけではありません。 ただ、PERが高いということは、裏を返せば株価が割高になっている=市場の期待値が高いということなのです。 ここで、先ほどの計算式を思い出してください。 ●PER(倍)=株価÷1株当たりの利益(EPS) この計算式は主語がPERです。主語がPERであり続ける限り、株価が割安・割高という面しか見られず、「なぜ株価が上がるのか」に答えることができません。なぜなら株価について議論したいのに主語が「PER」だからです。そこで、計算式を展開して主語を株価に変えるのです。 ●株価=PER(倍)×1株当たりの利益(EPS) これは、PBRも同様です。 ●株価=PBR(倍)×1株当たりの純資産(BPS) となります。 株価を主語に計算式を変えると、思考が変化します。 PERは「期待値」ですので、株価が上がるには、「PER(期待値)が切り上がるか、1株当たりの利益が上がるか」のどちらかが起こればいいのです(もちろん、理想はどちらも上がることです)。 PERが上がるにはどうすればいいか。そこで重要なのが、先に登場した「期待値」という考え方です。