「四季報」を108冊読破した男が教える正しい株価指標の見方…数字が示すほんとうの意味
カタリストを見つけろ!
ここで超重要なことが「カタリスト」を見つけることです。 カタリストとは、直訳すると「触媒」を指し、株価変動のきっかけ、またはその要因という意味で使われます。「株価が上がるきっかけ」とか「株価を押し上げる原動力」とざっくりと覚えても大丈夫です。 カタリストは難しく考える必要はありません。「連想ゲーム」だと思ってください。 株価=PER×1株当たりの利益、株価=PBR×1株当たりの純資産ですから、利益または資産価値が上昇することもカタリストですし、PERやPBRといった「期待値」が切り上がることもカタリストで、それらを見つければいいのです。
「利益が上がる」連想ゲーム
「ブーム」が起きたから、利益が上がるんじゃないかと考える。 「構造改革」というキーワードを四季報やニュースで見かけて、利益が上がるんじゃないかと考える。 インフレによってものの値段が上がれば、資産の値段も上がるのではないかと考える。大阪万博が近づけば、「万博」関連株の期待値(PER)が切り上がるのではないかという考え方でよいのです。 連想ゲーム的な考え方を身につけることで、カタリストを自然と見つけられるようになるのです。
PEGとPSR
「期待値が高いけれども、PERは低い」、こうした状況は買いです。 この判断をするために、私はPEG(Price Earnings Growth Ratio)を使っています。これはPERを成長率で割ったものです。 例えば、PERが20倍、成長率が10%だったとします(成長率にはいくつかの指標がありますが、複眼経済塾では今期と来期の営業増益率の平均を使っています)。この場合、20÷10=2となります。つまり、PEGは2倍です。 この意味は「1%成長当たりのPER」ということで、すべてが「1%成長当たり」と基準が統一されるので、検討銘柄のPEGが市場平均より下回っていれば割安といえます。市場平均は四季報の巻頭に掲載されている「市場別業績集計表」から計算できます。 また、PSR(Price to Sales Ratio=株価売上高倍率)という指標も重要です。 PSRの計算は簡単で、時価総額÷今期売上高で求められます。こちらも四季報の「【業種別】業績展望」から平均がわかります。全産業の売上高は約900兆円。上場企業の時価総額の合計もほぼ同じですので、株式市場全体の平均PSRは大体1倍です。 PSRは1倍を切っていれば非常に割安、1~4倍の場合は割安といえます。10倍株の条件を揃えた銘柄を平均すると、過去の経験則で大体4倍になります。
判断が変わってくる
PER、PEG、PSRの評価は、次のような目安で考えてください。 PER プライム市場全体の平均以下 ◯ プライム市場全体の平均超 × PEG 各市場平均以下 ◎ 各市場平均超 × PSR 1倍以下 ◎ 1倍超、4倍以下 ◯ 4倍超、10倍以下 △ 10倍超 × こうしたバリュエーションの基準で捉えてみると、PERだけを見て「割高だから……」と二の足を踏んでいた銘柄でも、PEGやPSRを確認すると判断が変わることもあるのです。 『株投資の達人が解説する「四季報」の正しい見方…お金の出入りに注目しろ!』では株投資の方法論をさらに詳しく解説する。
渡部 清二(複眼経済塾 代表取締役・塾長)