今冬のウクライナ戦線、鍵を握るのは「架橋」 ロ軍、北東部や南部で渡河うかがう
南部のドニプロ川では河口の島々を足場にする狙いか
だが橋を渡さない限り、ロシア軍が橋頭堡を保持するのは不可能とみられる。実際、マシュチウカ─ザパドネ方面のさらに北のノボムリンシク村方面にロシア軍が築いた別の橋頭堡は、すでに破壊されたと報じられている(編集注:シュチウカ‐ザパドネ方面の橋頭堡もウクライナの攻撃で大幅に縮小されたと報告されている)。 南部では、ドニプロ川がウクライナ、ロシア双方にとって依然として大きな難関として立ちはだかっている。ロシア軍が2022年11月にヘルソン州の州都ヘルソン市から撤退して以来、ドニプロ川の西岸(北側)はウクライナ側が、東岸(南側)はロシア側が支配している。 ウクライナ軍は2023年、東岸に橋頭堡を築いたものの、橋を架けられず、結局、橋頭堡は放棄された。現在、ロシア軍は、西岸に橋頭堡を築く足場となる強化陣地を設けるため、ドニプロ川河口の島々を支配下に置こうとしている。 このほか、ロシアおよびベラルーシとの国境に近いウクライナ北部チェルニヒウ州のティモノビチ、カルポビチ両村付近で、ロシアの特殊作戦軍が橋計2本を破壊したとも伝えられる。ロシア軍の現在の攻勢の中心地は別の方面だが、これらの攻撃はウクライナ北東部に対するロシアの新たな攻撃の前触れの可能性がある。一方で、ロシア軍の現在の配置も踏まえれば、ウクライナ軍の作戦、なかんずくハルキウ州での作戦を混乱させることを狙った可能性もある。 ■貴重な架橋戦力 ウクライナ軍もロシア軍も、迅速な架橋の訓練を受けた専門の工兵部隊を擁する。両軍とも、T-72戦車の車体に約20mの橋梁を搭載したMTU-72などの旧ソ連製戦車橋や、最長約227m、最大耐荷重60tのポンツーン橋である旧ソ連製PMP浮橋(ふきょう)を保有している。 ロシア軍は、より新しいMTU-90戦車橋やPP-2005浮橋も配備している。これらのシステムはより素早く展開でき、耐荷重もアップしている。ウクライナ軍はドイツや米国などから各種架橋装備も供与されている。