J最多3度目Vの広島・森保監督が日本人代表監督最有力候補に浮上!
G大阪の戦意を萎えさせる同点弾が生まれたのは後半31分。右サイドを攻め上がった柏があげたクロスをジャンプ一番、浅野が頭で叩き込んだ。明暗を分けたサイドの攻防を悔いなしと振り返った長谷川監督は、「こんなことを言ったらあれですけど」と苦笑しながら続ける。 「(佐藤)寿人をあの時間帯に判で押したように代え続けるのは、なかなか私にはできない。寿人との信頼関係もあると思いますが、愚直に1年を通してやり続けるのは普通の監督ではないと思います。戦い方を変えないメンタルの強さと、それを貫くことでチーム力をあげていく作業ができる意味でも」 佐藤は昨夏、2試合連続でベンチから外れている。ハーフタイムでの交代を命じた指揮官に対して「何で自分なんですか!」と感情を露にしたことで、直後の試合から実質的な罰則が下されていた。 お互いに勝利を思っての行動ということで、すぐに手打ちとなった。それでも、瞬間的に取った態度は咎められる。身を粉にしてチームのために戦う「自己犠牲」を求める47歳の指揮官の辞書に、「妥協」の二文字はない。残り30分になれば浅野の絶対的なスピードが生きる、という信念を今年も貫いた。 大一番へ向けた選手たちの意識づけ。機を見るに敏な選手交代。そして、スター選手でも特別扱いしない厳しさ。広島を頂点に導いた采配は、そのまま日本代表でも求められるといっていい。 「年間勝ち点1位となりながらここで負けていたら、1年間の戦いや選手の頑張りが自信として次へつなげていくのは難しいのなと考えていたので、正直、ホッとしている部分も大きいですね」 ひな壇で思わず本音ものぞかせた森保監督だが、次なる戦いは目の前に迫っている。開催国代表として臨むFIFAクラブW杯。10日のオークランド・シティ戦(日産スタジアム)から幕を開ける戦いは、日本人ナンバーワン監督が作り上げたチームと采配が世界に通じるかどうかが試される舞台となる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)