30億円フルベットの覚悟|濵渦伸次×小山薫堂スペシャル対談(前編)
成功するかというゴールは見えていた?
小山:ホテルのどこに向かえば成功するかというゴールは見えていたんですか? 濱鍋:いや、最初は宮崎に土地があったので、そこで自分の理想のホテルをつくってみようというだけで。でも、銀行にお金を借りにいったら貸してくれなくて。 小山:30億円を3年で使い切ったから(笑)。 濱鍋:はい。それでよっぽど工夫しないといけないなと悟り、ヤケクソで「NOT A HOTEL」とつけたんです。ホテルは通常借金し、投資の回収を何十年もかけて行うモデルですが、理想の空間をつくればそれを欲しいという人がいるかもしれないなと。先に販売して、クラファンのように資金調達をしてから建てるという、資金の入りと出を逆にしました。 小山:うまくいくと思いましたか。 濱鍋:30億円を使い切るなかで、日本に良いホテルがなかなかないなと思ったので、こういうのをつくれば欲しいという人がいるだろうなと。あと、2、3軒は自分で売って回れるという目算もあった。ただ正直、いまみたいな規模感で大きくなるとは思っていませんでしたね。(次号に続く) ■今月の一皿 ゲストの思い出の食である「母のカレー」「寮母さんの水で薄めたカレー」をイメージした、甘めに仕上げたカレーライス。 ■blank 都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。 濱鍋伸次◎1983年、宮崎県生まれ。都城工業高等専門学校電気工学科を卒業後、2007年にアラタナを設立。15年、スタートトゥデイ(現ZOZO)に売却し、グループに参画。ZOZOテクノロジーズ取締役を兼任し、20年に退社。同年4月、NOT A HOTELを創業。 小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。
小山 薫堂