経済再生「しくじりすぎ」の日本、世界の流れに乗るため「改革必須」の2つの領域とは
デジタル経済の領域で外国企業の対日投資が活発化している。この動きはアベノミクスで不発に終わった第2の矢(機動的な財政政策)と第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)に代わる役割を果たし、経済再生への「大きなひと押し」になる可能性を秘めている。ただし、外部要因に身を委ねていれば自動的に再生できるわけではない。これを機に「失われた30年」を脱して確かな成長軌道に乗るには何が必要か、今回はこの点を考えてみよう。
新経済への転換を促す「ひと押し」とは
前回解説したように、外国企業による対日投資が相次いでいる。AI時代に欠かせない半導体の開発・製造やデータ・センターの建設はその象徴だ。平和の配当が消滅しリアルな領域のデジタル化が進む中、日本経済を再評価する動きと言えるだろう。 この潮流をうまく生かせば、日本経済を低成長のワナから救い出す起爆剤となり、「失われた30年」の長期停滞から脱出する好機となるかもしれない。 経済の停滞が長く続く社会では、未来を切り開く技術と人材への投資が進まず、旧来型の経済から高所得を生みだす新経済への転換が困難になる。その閉塞状況を打破する力学が開発経済学でいう「ビッグ・プッシュ」だ(図表1)。 これは、工業化の波に乗れず「貧困のワナ」に陥った途上国が集中的な投資の「ひと押し」で高い成長軌道に乗る現象を指す。日本は決して途上国ではないが、工業化に続く情報化の波にうまく乗れず、経済構造の転換に苦戦しているのは事実だろう。 図表1の横軸を「技術への投資」と「改革への投資」による有形・無形のDX資本とみなせば、「失われた30年」の日本はDX資本の蓄積が進まず、デジタル経済への転換につまずいたと言える。 もし、外国企業の対日投資が触媒となって「技術への投資」と「改革への投資」が連鎖的に増加していけば、日本経済の再生に向けた大きなひと押し(=ビッグ・プッシュ)になる可能性があるのだ。