【50代のミネラル講座】「イライラ、不安、おっくうでやる気が起きない…」 そんな更年期のメンタル不調は鉄で予防
更年期の女性の体にはさまざまな不調が現れるが、メンタルの不調を訴える人も多くいる。その原因はおもに女性ホルモン、エストロゲンの減少によるものだが、その背景にはミネラル不足、特に鉄の不足が関係していることもあるようだ。日本循環器学会認定循環器専門医の登坂正子さんに詳しく教えてもらった。
◆女性ホルモンの減少に加えて生活の変化も影響
更年期世代に入ると、体だけでなくメンタルにも不調が見られることが多くある。 例えば… ・些細なことでイライラしてしまう。 ・今まできっちりやっていた家事や仕事が、なんだかおっくうになり、やる気が起きない。 ・体が重く、だるい、といった倦怠感が続く。 ・読書をしていても内容が頭に入らないなど、集中力が続かなくなる。 ・不安でたまらなくなる、特に理由もなく落ち込む。 など。 こうしたメンタル不調は、おもにホルモンバランスの乱れからくるといわれている。 更年期世代に入ると、女性ホルモンのエストロゲンが減少することで脳の視床下部や下垂体機能が変調をきたし、自律神経が乱れてしまうのだ。 また、体の変化に加えて、この年代ならではの環境やライフステージの変化から起きる悩みが、メンタルに影響し、不調をより悪化させてしまう。 例えば、子育てが終わった喪失感、親の介護に関するストレス、夫婦の問題や親戚づき合い、また、閉経を迎えてこれからの自分に感じる不安、容姿の変化に対するショックなどが、メンタル不調に拍車をかける。 そして、こうしたさまざまな要因からメンタル不調に陥る背景として、鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウムなどの摂取量不足などが指摘されている。 一般的に気分の変調を起こしやすい方は、糖質過多、たんぱく質不足の傾向がある。一般的にたんぱく質には、鉄や亜鉛などのミネラルが多く含まれており、これらの複数のミネラル不足がメンタル不調につながる。 今回は特に鉄の不足とメンタルの関係について学んでいこう。 ◆メンタル不調を訴える女性と鉄不足の関係 気分の落ち込みを訴える女性を検査すると、鉄が不足していることが多くある。鉄不足になると、貧血の心配があることはよく知られているが、ほかにも鉄不足はさまざまな不調につながる。 鉄のおもな働きは全身に酸素を運搬すること。鉄不足により体の細胞の隅々にまで酸素が行き渡らないと倦怠感につながり、脳へ酸素が行き渡らないと思考力が低下したり集中力が途切れたりするほか、気分が落ち込む原因にもなる。 また、鉄は、エネルギー代謝においても必要になるため、鉄が足りないと、体や脳が活動するために必要なエネルギーが作られなくなってしまう。 さらに、心の健康に深くかかわる「神経伝達物質(脳内ホルモン)」の生産にも、鉄は深くかかわっている。それは、別名「やる気ホルモン」と呼ばれるドーパミンと、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニン。 《やる気ホルモン、ドーパミン》 ・気持ちをポジティブにする。 ・好奇心を刺激して、やる気を起こし、行動力や快感を促す。 ・不足すると無気力、無関心になる傾向がある。 《幸せホルモン、セロトニン》 ・脳の過剰な興奮や不安を抑え、幸福感や安心感で心を満たす。 ・不足すると、落ち込みや不安、イライラ、ストレスを感じやすくなる。 これらの神経伝達物質の材料となるのはタンパク質だが、その合成の過程で、鉄が必要なのだ。 日本人の鉄の摂取量は減少傾向にある。その原因としては、インスタント食品やレトルト食品など、加工食品を食べることが多くなっていることが挙げられる。 というのも、こうした食品を加工する過程で、素材そのものに含まれているミネラルがかなり失われてしまっているからだ。 また、現代人は、米であれば白米、パンであれば白いパンというように、穀物は精製したものを食べることが多くなった。鉄などのミネラル類はこれらの穀類の外皮に多く含まれているため、精製の過程でそぎ落とされてしまい、精製された米や小麦粉のミネラル含有量は大きく減少する。