『ぼくのお日さま』奥山大史監督インタビュー。ハンバートハンバートの楽曲、池松壮亮との出会いが与えたもの
監督、撮影、脚本、編集をひとりで担う理由とは?
―以前インタビューで、『マカオ国際映画祭』で審査委員長の陳凱歌(チェン・カイコー)監督が語った、「1作目を撮るのは意外に簡単だ」という言葉に言及されていました。1作目を超える作品をつくらなければならない、と。 奥山:映画祭が終わったあとに言われたんです。「君たちはこれで満足しているだろう。ただ、頭のなかでずっとつくりたかったものを作品にしたのだから、1作目が面白いのは当然だ。2作目、そして3作目をつくり、ああもうこれ以上やるものがないぞとなってから面白いものをつくるのがプロだ」という話をしていて。やば、と思いました(笑)。 ―そのプレッシャーと向き合いながら2作目をつくられたんですね。 奥山:自分では1作目をやり切った感もあって、そのあとは、つくりたいものをなるべく出さないようにしよう、創作意欲を溜めておこう、映画のために温存しておかないと、という不思議な焦燥感もありました。 ただ、『ぼくのお日さま』でもう一度撮りきれた気がしたので、いまはもう少し外に求めてみようかなという気になっています。具体的に言うと、原作ものにも挑戦してみたいですし、今回池松さんから何か一緒にやろうと声をかけてくださったこともそうですが、巡ってくる機会を大事に丁寧に取り入れていくことが、やはり大事なんじゃないかと思っています。 ―奥山さんは脚本、監督、撮影、編集を全部一人でやられていますが、今後もそのスタイルで作品をつくられるんでしょうか。 奥山:映画以外のCMやMVでは撮影はお任せすることが多いんですが、映画ではしばらく続けていくんじゃないかなと思います。 ただ、今回、編集はじつは一人じゃなくて、フランスのエディターさんにも入ってもらって、その方の力をすごく借りました。撮影に関してもBカメで堀越優美さんに入っていただいています。映画においては誰かに任せきるという選択は積極的には選ばないと思いますが、人の力を借りたほうが映画が面白くなると信じたときは、そっちに飛び込むべきだと思っています。 ―一人ですべて担うのは本当に大変だと思いますが、そうされるのはなぜでしょうか? 奥山:「一人でなるべくやりたい」という気持ちがあるわけではありません。自分よりも素晴らしいカメラマンはこの国にもたくさんいるし、脚本でも編集でもそうだと思っています。 ただ映画の場合は、脚本を自分で書いた以上、その作品については自分が一番考えている時間が長いはずで、だからこそ撮りたい画はしっかり浮かんでいるはずだし、撮った画のどこを使うべきかも自分が一番わかっているはず。つまり、作品に対して愛情を自分が一番捧げることができるはずだという信念で突き進んできました。客観的な視点がなくならないように人の意見を取り入れながらになりますが、自分で書いた脚本を映像化するなら、できることはなるべく自分でやったほうが、良くも悪くも角が取れていない、原石のようなものが作れるといまのところは考えていますね。
インタビュー・テキスト by 生田綾 / 撮影 by 小林真梨子