『ぼくのお日さま』奥山大史監督インタビュー。ハンバートハンバートの楽曲、池松壮亮との出会いが与えたもの
雪の降る地方の街を舞台に、すこし吃音のある少年とフィギュアスケートを学ぶ少女、選手になる夢を諦めたコーチのつながりを描く『ぼくのお日さま』が、9月13日に全国で公開される。 【画像】奥山大史監督 長編デビュー作となる『僕はイエス様が嫌い』で『第66回サンセバスチャン国際映画祭』最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史(おくやま ひろし)による初の商業映画で、監督・撮影・脚本・編集と映画制作の一連の流れを自ら務めている。 フィギュアスケートを習っていた奥山自身の記憶も反映されている本作では、成長の過程にある子どもたちの心の機微と、淡くてもろい人間関係が美しい映像で紡ぎ出される。ハンバート ハンバートの楽曲“ぼくのお日さま”と、スケートのコーチ役を演じた池松壮亮との出会いを通して構想が固まっていったという本作について、奥山に聞いた。
フィギュアスケートを題材にした理由、ハンバート ハンバートの“ぼくのお日さま”との出会い
―監督が子どものときに習っていたフィギュアスケートを作品の題材にしたのは、なぜでしょうか? 奥山大史(以下、奥山):自分が通っていた学校での体験をベースにした『僕はイエス様が嫌い』の次に何を作るか考えていたとき、原作がある作品の映画化の話をいただいたりもしたんですが、自分のなかにまだ初期衝動みたいものが残されているのではないか、という気もしていました。 20代のうちに商業映画を撮ることができるのであれば、そのタイミングを逃さず、自分のなかに残っているものを撮ってみようと思ったんです。それで撮りたいと思うものを書き出したんですが、上のほうに自分が経験していたフィギュアスケートがありました。 奥山:『イエス様』はワンシーンワンカットでフィックス撮影している、絵の動きが全然ない作品だったんですが、フィギュアスケートを題材にすることで、『イエス様』では描けなかった身体性や動いている絵を撮ってみたいという思いもありました。そういったチャレンジもできるだろうと思ったんです。 ただ、スケートをそのまま映画にすると自分の思い出再現映像になってしまい、それは人にとって見るに堪えないつまらないものになってしまう。どうすれば映画になるだろうと考えて、4年くらい経ってから、ハンバート ハンバートの“ぼくのお日さま”という曲に出会って。この「ぼく」を主人公にしてみようかと考えるようになり、池松壮亮さんにも出会って、だんだん作品の構想ができあがっていきました。 巡り合わせだと思いますが、“ぼくのお日さま”と池松さんと出会ったのはほぼ同じ時期で、そこからプロットをつくるまでは半年くらいのスパンでとても早く進みました。