「死」がテーマでもポジティブな体験

ヌメンマー教授らは、ジャーナル「Cognition and Emotion（認知と感情）」に発表した論文のなかで、「こうした結果から総合的に判断して、美的体験において中心的な役割を果たすのは、私たちの身体感覚だと考えることができる」と述べている。 ■大半がポジティブな感情を体験 実験に協力した306人（女性134人、男性172人、平均年齢26.35歳）には、評価の対象とした作品をパソコンまたはタブレットの画面で鑑賞し、最も「興味深い」と思った部分に色を付けてもらった。「興味深い」が意味するところについては特に定義せず、直感に基づき判断してもらったという。 そして、これによって明らかになったのは、芸術鑑賞が引き起こす感情的な体験には、一貫性があるということだった。被験者が体験した感情のなかで多かったのは、「芸術的だ、バランスがいい、美しい、優雅だ」。次いで多くの人が挙げたのは、「好ましい、共感できる、楽しい」などのポジティブな感情だった。 一方、対象とした作品のなかには、テーマが「死、悲しみ」など、愉快とはいえないものも含まれていた。だが、それらにネガティブな感情を持った人は、少なかった。 ネガティブな感情のなかで多かったのは、「寂しさ」であり、それは常に、「感動的」「喜び」と同時に挙げられていたという。