中学受験って、意味あるの? 不合格で絶望するSNSの声…親はどう子どもに声掛けすべきか?
■事前準備で「魅力的な第二志望」を見つけておくこと。それが、家族の助けになる
合格発表後に取り乱さないためにも、受験本番までの家族間での話し合いや事前準備が大切だという菊池さん。良い親子関係を築き、落ち着いて受験に臨むために、具体的にはどのような取り組みが必要なのでしょうか。 「僕が主催するセミナーやサロンでは、事前に『魅力的な第二志望』をしっかり見つけてください、現実的に進学する可能性が高いのはここなんですよと伝えています。有名校、超進学校など倍率の高い第一志望の学校だけではなく、子どもの実力に見合った偏差値の学校の中から『心から通いたい』と思える第二志望の学校を見つけておくことで、第一志望が不合格だった時に落ち着いて対応することができるんです」 実際、「ここが第1.5志望」といえるぐらい魅力的な学校を見つけ、受験に臨んだ親子は、第一志望の不合格通知を受け取った後も、しっかりとマインドを切り替え、その後の受験に挑むことができたといいます。 「あるお子さんは第一志望が不合格になった時はすごく泣いていたそうです。いくら第二志望の学校が魅力的だと思っていても、第一に落ちたら悔しいんですよね。これは当然のこと。でも、事前準備をしていたから、ここで親御さんが慌てないで済んだ。魅力的な第二志望があるから、親御さんは冷静に状況を見守り、本人の気持ちの整理を助けることができたんです。ここで親御さんも共鳴してしまって、なんなら親御さんの方が子ども以上に取り乱してしまうと、子どものメンタルがボロボロになってしまい、受かる学校も受からなくなってしまいます。だから、事前に家庭で共通認識を作っておくことがとても大事なんです」
■子どものやる気を引き出す「観察力」と、勉強そのものの楽しさに目を向けさせる「タイミング」
昨今の中学入試では、新小学4年生になるタイミングで受験塾に通う家庭が主流ですが、その時点で子どもに強い意志はなく、中学受験には親の意向が多く反映される傾向にあります。小学生の子どものマインドを、どのように「受験」にシフトさせていくのか…自分の意志で勉強を頑張れるようにするためには、どのような働きかけが必要だと菊池さんは考えているのでしょうか。 「まずは学校の文化祭や説明会に足を運んでみるなど、受験しないと通えない学校があるということを子ども自身が知る必要があります。知らないことに興味は持てませんから。その後、中学受験という目標に向かって歩み続けるためには、日々『それをやって良かった』『楽しかった』という動機づけが必要です。友達と一緒に勉強すると楽しい、お母さんに褒められると嬉しい…など、わかりやすいことでいいんです。車の両輪みたいなかんじで、遠くのモチベーションと近くのモチベーション、両方作っていくということを意識していくように親御さんにお伝えしていますね」 その「近くのモチベーション」となる、勉強の楽しさ。それを子どもに感じてもらうために、親はどのような働きかけをすると良いのでしょうか。 「まずは、お子さんを観察することが大切です。親がどのような働きかけをしたら、子どもが楽しそうに勉強するのか、それを観察することで、子どものモチベーションを維持する方法が見つかります。例えば『ちゃんと勉強しなさい!』と声を掛けた時、子どもが楽しそうな表情で勉強しているかを見てみるんです。勉強はしているけど嫌そうな顔をしているな、と思ったら、自分の行動は間違っていたと思い、別のアプローチを考える。子どもが悪いから、子どもが変わらなくてはいけない…ではなく、自分の関わり方の結果が今の子どもの状態だと認識し、関わり方を変えていく。これが大事です」 例えば「勉強をしたらシールを貼る」という取り組み。シールが一定数貯まったら一緒に駄菓子屋へ行き、好きなものを買う」というご褒美方式を導入した家庭のお子さんは、最終的に勉強そのものの楽しさにも目覚めたといいます。 「ポイント制自体は良くあるものだとしても、ご褒美を『一緒に駄菓子屋に行くこと』と決めたのは、こちらの家庭のオリジナル。親御さんがお子さんの喜ぶことを観察した結果、生まれたインセンティブです。親が試行錯誤しながら、子どもが楽しんでいっぱい勉強をするようなアプローチを続けていった結果、成績が上がり、学習塾でのクラスも上がったそうです。その後はクラスメイト達に影響を受け、『すごい子たちがいる、この子達と一緒に勉強したい』と、より勉強に熱が入るようになったといいます」 子どもの成績が上がり始めた時、何か成果が出た時こそが、「勉強そのものの楽しさ」に気づかせるチャンスです。 「ご褒美は、勉強を楽しむための手段ではあるけれど、本質的な部分ではないんですよね。勉強をして、理解が進み、成績が上がると、勉強そのものが楽しくなる。仕事でいえば、お給料をもらえるだけではなく、仕事そのもののやりがいや成功体験も大事。そういうところだと思うんです。シール目当てに頑張っていた子どもが小テストでいい点を取れるようになった時、『頑張ったから、成果出たじゃん!』と、勉強そのものの楽しさ、やりがいに目を向けさせることができれば、より一層、好循環が期待できると思います」 一方、中学受験で良い親子関係を築けず、子どもに反発されたり勉強嫌いにさせてしまったりした場合、まずは自分の子どもに対する接し方を振り返り、関わり方を変えていくことが大切になります。 「人の生存本能は強力なので、不安があると、対処したくなるんですよ。子どもを守りたいと思う親御さんは、それが特に強く働く。だから、『子どものできていないところを見つけて叱る』という行動に出てしまうんです。『宿題やらないと先生に怒られるでしょ』『この問題しっかり解きなおさないとテストで悪い点数とっちゃうでしょ』みたいな働きかけのほうが強くなりがちなんです。でも子どもの側からすると、それってしんどくなるし、もうやりたくないと思ってしまうんですね」 危機感を煽っても、注意されることに子どもが慣れてしまうと、ますます強く煽らなければならなくなり、家庭内がギスギスした空気になることも。 「子どもが70点のテストを持って帰ってきた時に、30点のできてない部分を責めるような関わり方をする親は、子どものモチベーションをどんどん潰していくので気を付けて下さい。逆に40点のテストを持ってきたとしても、その40点分できたところを見つけて認めて褒めることができると、それが50点60点というように増えていく傾向にあります。アドラー心理学でも、「注目する行動は増える」と言っているのですが、子どもの良い行動に注目できるかというのが、子どものモチベーションを維持するためにはすごく大事なことかなと思います」