中学受験って、意味あるの? 不合格で絶望するSNSの声…親はどう子どもに声掛けすべきか?
■中学受験の価値は「勉強習慣」が身に着くこと。コツコツ努力できる人は、将来仕事も楽しめる
自分自身が中学受験を経験し、伸学会を立ち上げてからは多くの受験生と触れ合ってきた菊池さん。中学受験にチャレンジすることの本当の価値は「合格を目指して頑張る部分」にあると言います。 「受験直前期、小学6年生は1日10時間も勉強したりするんですよね。それに子どもは耐えて頑張っているわけですよ。憧れの学校に合格したいという目標がなかったら、普通は頑張れません。サッカーやダンスを頑張るのと一緒で、本人にモチベーションがあるからできることで、そういうモチベーションの源泉になることが、中学受験の価値だと思うんです」 さらに小学生時代に頑張れたこと、中学受験のために努力した経験は必ず人生の糧になると分析します。 「中学受験経験者は、勉強に対するハードルが下がっていると思うんですよね。ある程度、勉強するのが当たり前な状態になっていると思いますし、中高で中だるみしても、大学受験だから頑張るぞ!となった時、『小学生の時に1日10時間勉強できたんだから今なら12時間できるでしょ』とさらに頑張れるかもしれない。気づかないうちに、その子の糧になっている部分ってめちゃくちゃ多いんじゃないかと思います」 大人になってから仕事を楽しめる人には学習習慣があるというデータ分析もあり、まさに「若いころの苦労は買ってでもしろ」状態。子どもの将来にプラスに作用することがたくさんあると菊池先生。ただ、受験期間中は視野が狭くなりがちで、合格がゴールのように思えてしまうのも事実です。中学受験は通過点のひとつ。そのことを意識してもらうために、菊池先生は各家庭に課題を出しています。 「最終的に、将来どんな人になってもらいたいかを各家庭で考えてもらうようにしています。例えば、僕は子どもたちには将来、『仕事を楽しむ人』になってもらいたいと思っています。仕事は起きている時間の半分以上を使う人生の大きな割合を占めるものなので、仕事がワクワクする、頑張れるものだと、人生も楽しくなると思うんです。コツコツ勉強することが収入を得ることにもつながるし、仕事を楽しむことにもつながるということがデータ分析の結果もはっきりしているので、中学受験を頑張れた人は、将来、仕事を楽しめる可能性が高いと思います。嫌いな勉強に耐えるトレーニングは、将来やりたくない仕事を嫌々やる…辛い人生を過ごしていくことに直結していくので、今どういう風に能動的に勉強を楽しむのか、そして大人になってから仕事のための勉強や仕事そのものをどう楽しむのか、ということを親御さんは意識していくことが大事なのではないかと思います」 中学受験を終えても、長く続く子どもの人生。その未来に必要な勉強や努力を模索してきた数年間が無駄になるはずがありません。理想の結果が出なかったとしても、少し立ち止まったとしても、子ども自身また前へ向いて歩きだせる日が来ると信じ、高校受験、大学受験と今後訪れる通過点に向けて子どもがベストを尽くせるようサポートしていくことが、苛烈な受験を頑張る子どもたちの親に求められることなのかもしれません。 取材・分/森下なつ PROFILE/菊池洋匡 DMMオンラインサロンにて、菊池洋匡オンラインサロン「中学受験同好会」主宰。中学受験専門塾「伸学会」代表。算数オリンピック銀メダリスト。 開成中学・高校・慶應義塾大学法学部法律学科卒業。 10年間の塾講師歴を経て、2014年に中学受験専門塾伸学会を自由が丘に開校し、現在は目黒・中野を合わせて3教室に加え、オンライン指導も展開。「自ら伸びる力を育てる」というコンセプトで「ホームルーム」という独自の授業を実施し、スケジューリングやPDCAといったセルフマネジメントの技術指導に加え、成長するマインドセットのあり方を育てるコーチングしている。