拡大するリテールメディアの現在、若年層の新規顧客層取り込みで効果、データを販促や商品開発に活用
さらに同社幹部によれば、アプリでのクーポン販促は基本的にはメーカー側の販促費で成り立つため自社の持ち出しを減らせる一方、その確実な効果からメーカー側からの注目度も高いためオファーが多く、スマホの画面という限られた面積を活かす顧客利便性の面からそのオファーを断らざるをえないケースもあるそうだ。
〈食品卸には新たなビジネスチャンスも〉
こうしたSMのリテールメディアにおいては、一部の大手・先進小売業を除くと大手卸が背後でサービスを提供しているケースが多いようだ。大手卸各社とも、数年前からアプリやデジタルサイネージでのサービスを提供している。中小とは言わず中堅以上の大企業であっても、小売業個社ごとにアプリ開発やデータ分析などのIT人材を抱えることが難しい。とりわけ地方の小売業では、IT人材の確保が余計に難しく、アプリ開発等を集約するのは当然の帰結だろう。 またアプリ販促等を行うにしても、無数にある小売企業が個々にメーカーと交渉することには限界がある。アプリ開発を外部のシステム開発会社等に委託したとしても、それは同様だ。ここでは詳しく触れないが、まさに「なぜ日本の食品業界では卸売業が機能し続けてるのか」、要はメーカーも小売業も無数にある(多少非効率であっても)多様性が好まれる文化の中で、卸売業の必要性が高いという流通構造の根本にもかかわる要因もあるかもしれない。
そして食品卸企業側も、本業である卸売業に留まらない新たなビジネスチャンスとしてこうした部門を強化している。中間流通業として、主に小売業にはアプリの提供、販促支援で、メーカー等に対して商品のより詳しい情報提供やトライアル等を増やそうという試みだ。 たとえば、加工食品卸最大手の日本アクセスでは、2020年ごろから「情報卸」を標榜し、子会社であるD&Sソリューションズを通じデジタルマーケティングの強化を行っている。あえて子会社を主体としたことは、通常の商流とは分ける(同社の納入商品のみにしない)意図があるそうだ。同社はすでに大手を含めた20数社とこうした取り組みを行っており、その中にはSM大手も含まれている。
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