科学が証明「寝不足だと風邪をひきやすい」は真実 アメリカ発・興味深い睡眠研究の結果2つを紹介
「寝ても疲れがとれない」「眠りが浅い」など、睡眠に関する悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。今はタイパ、コスパが極端に重視される時代ですが、精神科医で、早稲田大学睡眠研究所所長の西多昌規さんは、「人生で眠っている時間は決して無駄な時間ではない」と断言します。 本稿では、しっかり寝ることがどれほど大事なことなのかについて、西多さんの著書『眠っている間に体の中で何が起こっているか』より一部抜粋、3回にわたって紹介します。 【グラフで見る】睡眠時間が短い人ほど風邪を引きやすい
■免疫力が低下すると風邪を引きやすい 免疫を高める生活習慣として、質の良い十分な睡眠が大切であるといわれます。間違いではなく、睡眠不足が続くと免疫が低下し、細菌やウイルスなど病原体に対する防衛力と抵抗力が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。 睡眠不足によって感染症にかかりやすくなることを示すデータは、たくさんあります。 ラットを2~3週間まったく眠らせないと死んでしまいますが、死亡したラットを解剖すると、全身性の細菌感染が見られました4。人間の病名では、細菌が全身に回って死亡する「敗血症」にあたります。
おそらく眠らせないことで、免疫防御システムが崩壊状態となり、普段ならばなんでもない細菌に対して脆弱になってしまったためと考えられます。 人間の場合でも、睡眠不足になると、ウイルス感染から風邪をひきやすくなることがわかっています。 アメリカ、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究グループは、人間に風邪ウイルスであるライノウイルスを実際に感染させる実験を行いました。164人の実験参加者が、5日間ホテルの中に隔離され、点鼻薬を用いて風邪のウイルス(ライノウイルス)の混じった点鼻液をさして、ウイルスに感染させられました。
倫理・安全面でもチャレンジングな研究ですが、実験報酬が1000ドルだったので、軽い風邪ならばかかってもいいという人はいたのでしょう。 念のためですが、ウイルスと濃厚に接した人全員が、風邪症状を発症するわけではありません。ちゃんと免疫が機能して、ウイルスを撃退して、何も症状が出ずケロリとしているのが理想的です。 ウイルスに感染する前に、1週間の睡眠時間を信頼性の低い自己申告ではなく、活動量計というウェアラブル機器で調べています。