「たった数秒で4000円もらえる...⁉ 」OpenAIのアルトマンCEOが仕掛ける「ワールドコイン」計画
数秒で登録
2024年1月の平日夕方、ショッピングの若者などでごった返す渋谷の街に、オーブの登録拠点を訪ねてみた。比較的新しい雑居ビルに入るシーシャ(水タバコ)・バーが拠点となっており、照明を落とした店内にはうっすらと水タバコの甘い香りが漂う。店内のテーブルに陣取る30代半ばくらいの男性が、オペレーターのようだった。 さっそく登録を済ませようとする男性に、まず個人情報がどうやって保護されるか教えてほしいと頼むと、「そもそも私たちはあなたの名前すら尋ねません」という答えが返ってきた。たしかに、こちらは自分のスマホにワールドコイン用のアプリをインストールするだけで、その際も名前や生年月日といった個人情報の入力は一切求められなかった。 初めて見るオーブはバレーボールくらいの大きさで光沢のある黒い球体で、それ自体が眼球のようだ。黒目に相当する部分をのぞき込むよう指示され、静止すること数秒。あっけなく登録は終了した。男性によると、オーブは虹彩のパターンや目、顔のかたちだけではなく、サーモグラフィーを使って体温からもこちらが人間であることを確認しているという。 こちらの素性や属性を聞かれることは最後までなかったが、スマホにアプリを入れている以上、こちらの個人情報を抜き取り、虹彩データとひもづけることは、やろうと思えば技術的には十分可能だろう。スキャンした虹彩データは保管されるか破棄するかを選ぶことができ、迷わず破棄を選択したが、これも確認する手だてはない。 もしかしたら、自分は個人の識別情報という極めて重要なデータを不用意に手放してしまったのかもしれない――。不穏な想像とともに、再び雑踏の中へ出た。手元のアプリには、さっそく「ウェルカムグラント」と称して10ワールドコイン(約4000円相当)が入っていることになっていた。 『「民間企業」による「ベーシックインカム」⁉...AIが創り出す「貧富の差」がヤバすぎる...! 』へ続く
井手 壮平