「たった数秒で4000円もらえる...⁉ 」OpenAIのアルトマンCEOが仕掛ける「ワールドコイン」計画
「終わりのない成長を目指し続ける資本主義体制はもう限界ではないか」 そんな思いを世界中の人々が抱えるなか、現実問題として地球温暖化が「資本主義など唯一永続可能な経済体制足りえない」ことを残酷なまでに示している。しかしその一方で、現状を追認するでも諦観を示すでもなく、夢物語でない現実に即したビジョンを示せる論者はいまだに現れない。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 本連載では「新自由主義の権化」に経済学を学び、20年以上経済のリアルを追いかけてきた記者が、海外の著名なパイオニアたちと共に資本主義の「教義」を問い直した『世界の賢人と語る「資本主義の先」』(井手壮平著)より抜粋して、「現実的な方策」をお届けする。 『世界の賢人と語る「資本主義の先」』連載第28回 『「ChatGPT」の次にOpenAIが仕掛ける「世界革命」...アルトマンCEOが主導する「UBI」とは』より続く
暗号資産との融合
2021年に入り、前回記事で紹介した構想はさらにSF的になる。UBIで配る「お金」を、法定通貨ではなく、アルトマンらが立ち上げた暗号資産「ワールドコイン」とする計画が公表されたのだ。 それによると、ワールドコインの運営を担うワールドコイン財団や関連企業は、「オーブ」と呼ばれる球体状の網膜スキャナを既に開発しており、世界中に配備を始めている。ワールドコインの受け取りを希望する人は、「オーブ・オペレーター」と呼ばれる登録係に連絡を取り、オーブを使って直接、瞳をスキャンしてもらわなければならない。瞳孔の外側を取り囲む虹彩と呼ばれる部分は一人一人パターンが異なり、生涯不変とされているため、本人確認に適している。 虹彩を本人確認に用いるのはAIの発達により、一人の人間がネット上ではいくらでもフェイク・アカウントを作り、何重にも受け取ることができてしまうためだ。ワールドコイン財団は、現状ではほかに方法がないとしてオーブを通じてのみ本人確認をするとしている。プライバシー保護のため、虹彩は氏名をはじめとする本人情報とは結び付けないと主張する。 さらに財団は、暗号資産の配布だけでなく、ネット上の投票でもこの仕組みを使えば不正投票を防げるとして、さらなる活用に意欲を見せている。オーブは現在、日本国内では東京・渋谷などに登録拠点があり、その数は増え続けている。