成長期にローファーを履くと足病のリスクを高めるのはなぜか【日本版「足病医」が足のトラブル解決】
【日本版「足病医」が足のトラブル解決】 将来的な足病を予防するには、小児期から対策する必要があるのはご存じでしょうか。 医師が考案「医学的に正しいウオーキング」を実践する3つのポイント 生まれたばかりの赤ちゃんの足は、ぷっくりとして脂肪が多く扇形に開いています。足骨のほとんどは軟骨で、足を横から見ると土踏まず(アーチ)がない扁平足であることから、バランスが不安定でペタペタ歩きになるのが特徴です。3歳を過ぎると、活発に動き回ることから足部の骨や筋肉、関節が発達して徐々に足底のアーチが形成されはじめ、12~14歳ごろまでに成人の足へと成長していきます。 そうはいっても、個人ごとに体のプロポーションが異なるのと同じく、足も成長するにつれ筋肉と骨格の割合は人によってさまざまです。 成長期に上履きやローファーなどの規定靴を履くと、足裏に十分な刺激がかからず足の筋肉の成長を妨げます。ほかにも、足の形状にフィットしない靴の着用を続けることで、将来的に「外反母趾」や「巻き爪」、足趾が伸ばせなくなる「鉤爪趾(クロートー)」、立っている状態で足趾が地面につかない「浮き指」などの足病を引き起こす危険性が高くなります。 以前、母親に連れられて当センターを受診されたのは、中学生の男子生徒でした。母親がこう話します。 「足の親指が真っ赤に腫れていてズキズキと痛むようなのですが、部活を休めないからと、ずっと痛みを我慢していたそうです。最近ではローファーを履いて通学するのもやっとな様子で……」 足の状態を見ると、親指の巻き爪がさらに悪化して爪の端が皮膚に食い込む「陥入爪」を起こしていました。そこから細菌に感染し、ひどい痛みや腫れが生じていたのです。 本来、爪は内側に丸まりやすい性質で、立っているときに地面から圧力がかかって丸まるのを防いでいます。ローファーは先が細い上に、紐で足の甲を十分に固定できないため、しっかりと踏み返し動作が行えません。一日中履き続ける生活で足指にかかる圧が不足して爪が変形してしまったのです。 また、爪のすぐ下層には末節骨があり、爪が食い込んだ部分から細菌に感染して骨髄炎を起こすと、最悪のケースでは足の切断を余儀なくされる恐れがあります。早めの対策が肝心です。 (田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)