Netflix話題作に関わるプロデューサー、髙橋信一の思考。『地面師たち』『ONE PIECE』製作の裏側
どんな視点で企画を採用していくのか? 「観たことのない物語や映像表現」
―『シティーハンター』『浅草キッド』『幽☆遊☆白書』『地面師たち』『極悪女王』など、懐かしい題材や雰囲気を今風にブラッシュアップした作品がどことなく多い気がしますが、それは意識しているのでしょうか? 髙橋:たしかに……とは思いますが、あまり意識はしていないですね。それらの作品をつくるなかで共通して目指したことは、物語のなかに内包されている「驚くような世界観や映像表現・主人公たちの葛藤や成長の物語」をいかに魅力的に見せられるかということだったと思います。 ―『地面師たち』は大根仁監督が企画を持ち込んだと先日のインタビューでお話されていましたよね。クリエイターからの持ち込みは多いんですか? 髙橋:ラインナップに並ぶ企画でいうと半分ぐらいが持ち込みで、半分がNetflixのプロデューサーたちが考えた企画ですね。Netflixオーディエンス内外の人々が何を求めているのかは、僕たちが一番わかっていなければいけないので、社内の人間もしっかり企画を考えるようにしています。そしてその企画をクリエイターの皆さんに「挑戦してみたい!」と思っていただけるように説明することも我々プロデューサーの重要な役割です。 ―担当作品のなかでも『トークサバイバー』は異質ですよね。 髙橋:僕が佐久間(宣行)さんの作品の大ファンで、いつか一緒に仕事をしたいとは以前から思っていていました。私が入社したタイミングでNetflixがバラエティもやっていこうという環境になっていたので、佐久間さんの才能を信じて一緒にやれば新しいものができるのではないかと思い、フリーになられた直後の佐久間さんに声をかけさせていただきました。最初に5つくらい企画をいただいて、そのなかにあった『トークサバイバー』を「ぜひやりましょう」と進めていきました。ドラマのような物語とエピソードトークのバランスが思わず一気見してしまうバラエティとしてNetflixらしい企画になると思ったのです。 ―髙橋さんはヒット作を連発していますが、その秘訣はあるんでしょうか? 髙橋:ひとえにクリエイターの皆さんの力のおかげですし、ヒットの秘訣は僕も知りたいですよ(笑)。でも、やはり観たことのない物語や映像表現、アプローチがNetflix作品を評価していただく一番大きなポイントになっているとは思います。 たとえば『サンクチュアリ -聖域-』の相撲の取組の表現は、通常の相撲中継では味わえない映像でしたよね。『地面師たち』では圧倒的な物語展開、『極悪女王』も映像やアクションや知らざるキャラクター表現など、かなり挑戦をしていますし。クリエイターやスタッフ・俳優の方々にとっても、観客の皆さんにとっても、その挑戦を魅力に感じていただき、Netflixで作品をつくろう、作品を観よう、と思っていただけることが一番の秘訣なのかもしれません。 Netflixにいるプロデューサーは全員個性が違いますが、僕はゼロから1を生み出すプロデューサーではないんです。でも1を見つけて10や100にできるかもしれないと考えるプロデューサーではありたいと思っていて。だからこそ、僕の場合は誰と一緒に作品づくりをするかがとても重要なんですよね。映画・ドラマシリーズだけでなく、バラエティなども担当できているのは、そういった特徴に由来するのかもしれません。 ―もちろんボツになる企画もたくさんあると思うのですが、採用の基準はどういったものなんでしょう? 髙橋:シンプルに面白そうかどうかですね(笑)。最近つくられていないけど需要がありそうなジャンルを掘り起こしたり、『極悪女王』や『サンクチュアリ -聖域-』に代表されるように、この企画の映像表現はすごいものになりそうと思えるかは重要だと思います。 「Netflixで観られそう」や「このジャンルは好かれそう」という基準も当然ありますが、それだけだと過去の作品の縮小再生産のような企画ばかりになるので、「新規性や驚き」と行った面は重要視するようにしています。