《ブラジル》記者コラム 「在外邦人の45%孤独」は本当か? 全体の声を代弁していない調査では
「調査の対象者」は誰なのかと思い、報告書を見てみると、《(1)調査の対象:海外に在留している日本国民/(2)海外在留邦人数:約130万人(令和5年10月1日現在)とある。つまり、ネットをやらない永住者や移民も入っている。在留届を提出している在留邦人に外務省からメールを送り、回答があった5万5420件から集計したものだという。うち5年以上の在住者が54・6%なのでこの人たちが永住者の可能性が高い。何人が在留届をだしているのか知らないが、この時点で日本国政府に何らかのサービスを求めている人、日本国政府とのつながりを保ち続けたい人に限定されている。だから「在留邦人全体を代表する声」とは言い難い。 次のようなコメントもあった。《そもそも在留届を出している人たちの多くは帰国組であり、永住する意思はない。だから最初から現地人と溶け合って生活している訳ではない。このような状況では決して現地の生活に馴染めないだろう、孤独感があって当然。 僕は留学時代から30年米国に居住して帰国したが、逆に米国生活が懐かしく日本では孤独感を感じるには、それだけ米国生活に馴染んでいたから。帰国して何年たっても夢にでてくる世界は米国であり、会話は全て英語だけの世界》 ネットをやらない高齢移民、生活に忙しくてそれどころでもない人、日本政府に今さらサービスを求めていない人もいるが、そういう人は最初から母数に入っていない。前掲コメント《この統計、多分母数が間違っているのでは?》を詳しく解説すれば、そんなことになるのではないか。
30年前に比べれば今の通信環境は夢のように便利
他に興味深いコメントとしては、《既に孤独を感じた過去を乗り越えたのもあるのではないかと思います。私がアメリカに住み始めたのは20代半ばでしたが、当時はインターネットもなく今のようにネットで近くに住んでいる日本人と繋がるなんてことはない時代でした。 日本への国際電話は大変高額で頻繁にできないし、英語もあまりできずに現地の友人ができても込み入った話もできないし、1人で部屋にいると孤独に押し潰されそうでした。寂しくて泣いたことも一度や二度ではなかったです。そのような時があったので、離婚後一人になってもネットがあって日本の家族や友人と簡単に連絡ができたり、こちらの友人と出掛けたりした事もあって、昔のような孤独を感じる事はなかったです。 あと老い先短いと思うと「あれも食べたい」「あそこにも行っておきたい」とやりたい事をやっとかないと悔いが残るので孤独感じてる暇ないかも》 これを読んで、コラム子がブラジルに来た1992年、国際電話するのにホテルのフロントで電話を借りて、1分間で100ドルくらいかかった記憶がある。当然、滅多にできなかった。インターネット以前だからラインもワッツアップどころかメールもなく、日本の家族に連絡といえば片道1カ月半から2カ月もかかる郵便だけだったのを思い出した。 でも最初からその覚悟で来ており、「孤独」は想定範囲内だった。だからこそ、現在のワッツアップを使ってタダ同然で日本の人と会話できる状況、NHK国際放送もあり、日本の映画やテレビ番組までリアルタイムで見られる現状は、それだけで夢のようだ。