「もう調理道具を手放したくない!」料理家が挑むキッチン革命
かくしてキッチンワゴンは、僕の日常生活に革命をもたらしました。必要なものが必要な時に、ストレス無く、すぐに使える環境が整ったのです。キッチンは相変わらず狭いままだけど、その機能の一部をダイニングに拡張することで、その問題をあっさり解決したということになります。 そうなると更に欲が出てきます。陣取り合戦の「陣」は増えたけど、それはあっという間に再び埋まってしまいました。逆に考えると、もっと陣を増やせば、更にツールは増やせるのではないか。一度は諦めた電気圧力鍋やエアフライヤーや電鍋も、再び呼び戻せるのではないか。改めてキッチンワゴンが置かれたスペースを眺めてみると、そこには、もう一台くらいなら同じキッチンワゴンが置けるくらいの余裕が残っていました。 そこに更に何台かの最新据え置きツールが置かれることを想像すると、少しうっとりしました。しかしそこまで行くとこの部屋は、もはやダイニングではなくて「ラボ(研究室)」になってしまいそうでもあります。それは実際、幸せなことなのか。 僕はよくわからなくなって、愛するホットクックに相談してみました。 「ねえ、どうしたらいいと思う?」 ホットクックは不機嫌そうにそっぽを向いて、明らかに拗ねた口ぶりで答えました。 「好きにすればいいじゃない」
教えてもらったのは……稲田俊輔さん
いなだしゅんすけ/料理人、飲食店プロデューサー。南インド料理店「エリックサウス」総料理長。鹿児島県生まれ、京都大学卒。和食、フレンチ、洋食、インド料理などさまざまなジャンルのメニュー監修や店舗プロデュースを手掛ける。著書に『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』(柴田書店)『チキンカレーultimate21+の攻略法』(講談社)ほか。新刊『個性を極めて使いこなす スパイス完全ガイド』(西東社)『ミニマル料理』(柴田書店)は2023年度レシピ大賞を受賞。