「もう調理道具を手放したくない!」料理家が挑むキッチン革命
調理道具の置き場争いに疲れた稲田俊輔さんが出した〈結論〉は……【いそがし家庭は金で解決だ!】
毎日の料理の手間や負担が減らせる調理器具があれば、ごはん作りはラクになる、そしてよりおいしくなる! お掃除を自動掃除機に頼るなら、料理も便利な道具を活用しませんか? 100均だけどすごい! 料理のプロが絶賛する「本当に使える卵グッズ」 アイデア溢れる料理家としても人気の高い稲田俊輔さんが、おすすめの製品を使った夕ごはんに役立つオリジナルレシピを提案します。忙しい家庭にとって一番惜しいのは「時間」。優秀な調理器具や調理家電で貴重な時間を手に入れる=【お金で解決しよう!】という連載です。
かつて僕は「キッチンは陣取り合戦である」ということを書きました。ごく一部の例外的な家庭を除けば、日本のキッチンは決して広くありません。ほとんどのキッチンには隙間なく物が埋まっており、余分なスペースなどそうそうありません。 この連載ではこれまで、さまざまなキッチンツールを紹介してきました。お読みいただいた読者の方が「これは欲しい!」と思ったものも少なくなかったのではと自負しています。しかし、おろし金や包丁研ぎやだし巻き器くらいなら気軽に導入できますが、ホットクックや電鍋などの「据え置き型」のツールだとそういうわけにもいきません。何かを新しく置くには、今ある何かを諦めて捨てなければならない。そういう人がほとんどでしょう。 これは読者の悩みである以前に、僕自身の悩みでした。これまでも、この連載のためにお借りした据え置き型ツールが、入れ替わり立ち替わり我が家に到来しました。ただでさえ狭い作業スペースの一角に無理やりそれを置き、1~2週間ほぼ毎日試作を続けるのです。一通り試作を終えた頃には愛着も湧いています。何よりその実力を思い知らされています。おいしいレシピもたくさん完成しました。本当はもう手放したくありません。ずっと手元に置いておきたい。 しかしそういうわけにもいきません。作業スペースに無理やり仮設したそれは、正直邪魔です。かと言って今ある炊飯器やオーブンを手放してそこに置くわけにもいきません。おまけに、手放したくないものは次々に現れます。エアフライヤーに電気圧力鍋……際限がありません。 なので僕は一仕事終えるたび、心を鬼にして、ビジネスライクにそれらを返却しました。冷たい男だと思われたことでしょうが、僕は「これがお互いのためなのだ」と、自分と彼女たちに言い聞かせるしかなかったのです。 ある時再び、ホットクックが我が家に送られてきました。それはまた別の仕事で、今回は1~2週間というわけにはいかず、数ヵ月の長丁場になることが予想されました。そんな長期間、狭いキッチンの作業スペースが半分埋まってしまうのは耐えがたかったので、仕方なくダイニングテーブルの上に設置しました。 ホットクックのデザイン自体は好きです。しかしそれはなかなか威風堂々としており、テーブルの上に置かれたそれには、まあまあな威圧感があります。大事な仕事のためとは言え、これから毎日ここで飯を食うのか、と思うと少々ゲンナリしました。 しかしそこで天啓が降りました。 (あれ? テーブルが拡張できれば、これって解決するんじゃね?) 僕は早速、テーブルの高さと横幅をメジャーで計りました。そしてAmazonのサイトを開き「キッチンワゴン」を検索しました。首尾よく、ほぼピッタリのサイズのワゴンが見つかりました。ポチりました。2日後にそれが届きました。テーブルを壁から少し離し、ワゴンをピッタリと嵌めました。そしてそこにホットクックを移動させました。問題が完全に解決した瞬間です。 僕は心の中でホットクックに伝えました。 (一生、そばにいてくれないかな) ホットクックもなんだか嬉しそうでした。 そんな完璧なハッピーエンドだったのですが、話はもう少し続きます。ここからが第二章です。