「アルト・ターボRS」から見えるトランスミッションの未来
スズキから久しぶりに登場した軽自動車のスポーツモデル「アルト・ターボRS」が注目を集めている。2WDモデルで670キロと軽量な車両重量に軽自動車の馬力自主規制上限の64馬力ターボユニットを組み合わせ、車両価格も129万円とここ最近の軽スポーツモデルの中では手頃な価格も功を奏している。 「CVT」の終わりは日本車の始まり 2014年クルマ業界振り返り ライバルと目されるダイハツ・コペンが850キロ/180万円、間も無く登場するホンダS660の予想値が850キロ/200万円と言われており、絶対金額が安価で軽いと言う魅力はかなり際立っている。もちろんコペンとS660は専用設計シャシーであり、かかっているコストからすれば高いとは決して言えないが、お金を払うユーザー側が専用設計シャシーに意義を見出すか見出さないかはまた別の話だ。 是非この3台を並べて試乗してみたいところだが、そういう機会はなかなかないだろう。 さて、そのアルト・ターボRSだが、もう一つの話題はそのトランスミッションだ。「スポーツモデルにも関わらずマニュアルミッションが選べないのは残念だ」との意見があちこちに散見される。このモデルに最適なマニュアルトランスミッションがないというスズキのお家事情はさることながら、今回のAMT(スズキの呼称ではAGS)オンリーという選択の向こう側には、これからのスポーツモデルのトランスミッションについて新しい流れが見えるように思う。アルト・ターボRSの登場を機に、今回はDセグメント以上とCセグメント以下に分けてトランスミッションの未来について考えてみたい。
世界と日本の自動変速機
現在市販されているクルマに搭載されるトランスミッションの種類は大体以下の通りである。その大まかな流れから見ていきたい。 ・マニュアルミッション ・トルコンステップAT ・CVT ・DCT ・AMT
この中で、Dセグメント以上の乗用車に搭載されているのは絶対多数派が「トルコンステップAT」、だいぶ差がついてプレミアムモデル向けの「DCT」、少数派の「CVT」と3種で、DCTの登場で一時は衰退するかに見えたトルコンステップATは、電制と多段化によって勢いを盛り返し、まだ当分は最大勢力であり続けるだろう。CVTは原則的にトルク容量の限界が低いため、Dセグメント以上の大きなクルマには向かない。