「アルト・ターボRS」から見えるトランスミッションの未来
小型車用のトランスミッション
Cセグメント以下の小型車ではどうだろう? まずは小型車用トランスミッションの概要から見ていこう。世界的には、小型車はまだマニュアルミッションが圧倒的に優勢だ。日本国内ではCVTが多数派を占めている。ホンダがここにDCTを持ち込んだが、リコール問題で大騒ぎになっているのはご存知の通り。 このクラスは、欧州ではマニュアル需要が相当に根強い。小型車であってもオートマ需要が高いのは米国と日本くらいで、欧州系の小型車はフォルクスワーゲン系を例外として対米輸出はほとんどない。そういう点から見ると欧州のメーカーにとって、自動変速機必須の対日輸出モデルは例外のようなものだ。 そのためイタリア車とフランス車の場合、マニュアルのパーツ流用で生産できるというメリットを評価してAMTでお茶を濁しているメーカーが多い。お茶を濁しているという言い方をしたくなるのは、例外はあるものの、その制御を本気で洗練させていく意思が感じられないからだ。一方、日米両国に橋頭堡(きょうとうほ)を築いたVWグループやベンツは、ある程度台数が捌けることが分かっているのでDCTで本格的に対応している。全てとは言えないが、設計年次が古いクルマはトルコンステップATを備える傾向にある。 オートマ大国の米国車は、他国メーカーからのOEMを除いて、Cセグメント以下に属する小型車が極端に少ないが、こちらは原則的にトルコンステップATが主流。電気自動車やハイブリッドを除けばほぼトルコンステップAT一色だと言っていいだろう。
アジアは経済とインフラの発展度合いに大きな差があるため、一括りにできない。日本車はCVTが多数派だが、ここ最近徐々に多様化の方向に向かっている。前述のホンダのDCTを始め、多段トルコンステップATへの回帰も見られる。 一方で、途上国では価格と整備性の両面からマニュアルが主流だが、これも国によって状況がだいぶ違う。中国は国内でもエリアの差が激しく、都市部ではほぼ日本と同じく最新の自動変速機が普及し始めている。ただし内陸部に行くとまだまだメンテナンスインフラに難を抱えており、マニュアル以外は保守ができない。次期自動車大国として注目されているインドは、現在のところマニュアルが主流だが、潜在的にオートマ志向は高いと言われている。