AIモデルを安全な「部屋」で訓練可能にする米新興企業Anjuna、36億円調達
生成AIモデルの台頭は多くの分野で注目を集めているが、企業や個人が人工知能(AI)のトレーニングやデプロイの際にクラウドベースのサービスに依存することは、セキュリティ侵害やデータ漏洩のリスクを高めている。 カリフォルニア州パロアルトに拠点を置くAnjuna(アンジュナ)は、このリスクを軽減するために、Seaglassという独自のアーキテクチャで、「コンフィデンシャルコンピューティング」と呼ばれるプロセスを使用して、学習データを保護するための仮想データ交換ボックスを作成する。これらの暗号化された「部屋」に置かれたデータは、AIモデルのトレーニングやコラボレーションの際に、ハッキングやデータ侵害のリスクを軽減することが可能だ。 コンフィデンシャルコンピューティングは、メモリやCPU上で「データを暗号化した状態」で演算処理することで、より高いレベルでデータを保護する仕組みだ。 「私たちは、あらゆる用途に適用可能なコンフィデンシャルコンピューティングのプラットフォームを構築しました」と、Anjunaの共同創業者でCEOのアヤル・ヨゲブはフォーブスに語った。 同社は8月7日、M VenturesやSineWave Ventures、AI Capital Partnersらが主導したシリーズB2ラウンドで2500万ドル(約36億円)を調達したと発表した。この調達で、Anjunaの累計調達額は6700万ドル(約97億円)に達している。同社は、この資金を選ばれた顧客に提供中の「AIクリーンルーム」機能の新バージョンの開発に充てる計画だ。 イスラエル生まれのヨゲブ(44)は、テルアビブ大学で電気工学とコンピュータサイエンスを学び、イスラエル軍の最も著名な諜報部隊の8200部隊に参加した後に、カリフォルニア大学バークレー校でMBAを取得した。彼はその後、企業セキュリティの分野に進み、SafeBreachやLookout、OpenDNS、Impervaなどの企業で複数の管理職を歴任した。 ヨゲブは、2018年に20年来の知人のヤン・ミカレフスキー(42)とともにAnjunaを設立した。2人は、ヨゲブがスタンフォード大学で博士号を取得しているときに再会したという。 ■高度なAIモデルの開発を支援 コンフィデンシャルコンピューティングは、新しい概念ではない。インテルやマイクロソフト、ARMのような半導体メーカーは、サーバーレベルでこれらの領域を作成できるようにするハードウェアをCPUやGPUに組み込んでいる。しかし、これらの機能を実現するために構築されたソフトウェアは、それぞれに互換性がないことが多くコラボレーションを困難にしている。