インフルエンサーが生み出す新たなファッション、「本当に作りたい服」をSNSで実現 デザイン類似で「炎上」リスク、ファッションローの知識も必要に
高級ブランドのファッションショーは必ず見て流行を押さえつつ、フォロワーの日常に溶け込みやすい商品を目指している。現在20歳と18歳の子どもを育てた経験を生かし、「授乳中でも使えるデザイン」や「水をはじきやすい生地」といった具合だ。もちろん、三角形の襟をつけたり、前後を変えても着られるようにしたりと、自身のセンスが光る提案も忘れない。 ブランド立ち上げから3年間は「売れてはいたものの、直感的な服作りでお客さまに寄り添えていなかった」という。Ayaさんは「(自分が作りたいのは)売れるための服ではない」と気づき、当初掲げた「1カ月に新作を4着作る」といった目標を見直し、森住さんと相談して「渾身の1着を作る」ことに方針転換。1万4千円のワンピースが、それまでに販売した複数の商品の売り上げに相当するヒットにつながったという。 Ayaさんは「インフルエンサー自身の魅力だけではブランドは続かない。お客さまの生活を想像し、高揚感を持って着てもらえるよう、もう一歩先の提案をしている」と話す。出店費用が掛からないため、販売価格が抑えられるのも特徴だ。「ユニクロ」や「ジーユー」といったファストファッションと組み合わせて紹介することも多い。
▽個人でもネット通販の運営が簡単に テラオエフの寺尾政己社長(58)は「個人がデザインし、発信できる時代になった」とみる。企業が安いコストで「売れる服」を作る時代は雑誌で紹介された服を着ていれば消費者にも安心感があったが、現在はSNSの影響で着こなしも多様化したと考えている。 テラオエフは1962年に子供服の縫製会社として創業。寺尾社長は2代目だ。バブル崩壊後、アパレル大手ではコスト削減のため内製化をやめる動きが広がり、テラオエフは2007年に相手先ブランドによる生産(OEM)事業に乗り出した。裁断から縫製まで一貫してできる環境が強みで、トラブルへの対応も早いと自負する。 寺尾社長は少子高齢化でレディースファッション市場が縮小していくのは避けられないと判断。インターネットを活用した事業構造改革を進め、2017年にインフルエンサー向けの事業を始めた。当時の売上高比率は既存の大手アパレル企業向けが7割だったが、2022年にはインフルエンサー向けが9割を占めるまでに変化した。