大河『光る君へ』京都・平安京を舞台に繰り広げられる権謀術策と男女の愛憎。宇治は、平安貴族たちが好んで別荘を構えた「別業の地」
◆宇治市源氏物語ミュージアム 宇治上神社から「さわらびの道」をさらに進むと、「宇治市源氏物語ミュージアム」に到着します。 このミュージアムには、光源氏の邸宅「六条院」(想定敷地面積は6万3500平方メートル)を100分の1に大きさで精巧に再現した模型や、当時の装束、調度品の展示、「宇治十帖」の名シーンを映像化したシアターなどがあり、『源氏物語』の世界を体感できるようになっています。 入口から進み「平安の間」に入ると、まず目に飛び込んでくるのが漆塗りの牛車です。 その大きさに驚く人も多いはず。ところが、ここに復元展示されているのは最も一般的な網代車で、サイズとしては中型だとか。ステータスシンボルでもあった牛車は、身分や格式によって使い分けがあり、皇族や上級貴族だけが乗ることのできる唐車(からぐるま)など、さらに大型のものもあったそうです。
◆平安時代にタイプスリップしたような気分 4人乗りの唐車となると車体の重さだけでも相当なもの。車を引く牛の負担もさぞや、ということで、長距離を移動するときは、替え牛が用意されていたのだとか。 余談ながら、京都では「葵祭」や「時代祭」などの行事の際に、本物の牛が牛車を引く様子を間近で見ることができます。ギシギシと大きな音を立てながら、京都の街を牛車がゆっくりと進んでゆくさまは、なかなかの迫力。平安時代にタイプスリップしたような気分になります。 牛車に乗るときはうしろから入り、降りるときは前から。前後の入口には御簾がかけられていて、御簾の下からこぼれ出た女性の装束の袖や裾の美しさでも競い合っていました。 『源氏物語』では、賀茂祭(葵祭)の見物場所を巡って、光源氏の正妻・葵の上と恋人である六条御息所の従者のあいだで諍いが起こり、六条御息所の牛車が壊されて、他の場所へ追いやられる「車争い」のエピソードが有名です(巻9「葵」)。名場面の1つとして知られているので、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。
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