国民が持ち上げられ、相変わらず「立憲下げ」勢が多いが…「政権の担い手」へ期待背負った野党の主役は立憲民主党だ
(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員) ■ 「2強多弱」に変化した国会 【表】過去5回の衆院選での主要与野党の獲得議席推移。今回148議席を獲得した立憲民主党は明らかに階段を一つ上った 10月27日投開票の衆院選で148議席を獲得し、大きく躍進した立憲民主党。3年前(2021年)の前回選挙(96議席)から50議席以上を増やし、自民・公明の政権与党を過半数割れに追い込む戦果を挙げた。 メディアやネット上では相変わらず「立憲下げ」をやりたい勢力が、左右(この言葉は好きではないが)ともに多いようだ。 選挙結果の中からあらを探して「比例票が伸びていない」などと主張し、立憲の躍進を過小評価しようとする。あるいは、立憲より120議席も少ない野党第3党・国民民主党を無理やり持ち上げ、選挙結果の印象を大きくゆがめようとする。 だが、どんなに目を背けようとも、今回の選挙結果が示したことは明白だ。国会の構図が自民党の「1強多弱」から、自民党と立憲民主党を軸とする「2強多弱」へと明確に変化した、ということだ。 単に構図が変化しただけではない。 自公が過半数割れしたことによって、これまでの「自民党が多数派の横暴で全てを決定し、少数派の野党をなぎ倒した『決めすぎる政治』」が、第2次安倍政権の発足以来12年を経て、ようやく終焉を迎えることになる。 立憲民主党は明らかに、一つの階段を上った。この状況を踏まえ、立憲には「政権を担い得る政治勢力」としての新たな振る舞いが求められる。
■ 野党第1党としては現制度下で歴代第3位の議席数に 民主党が野党に転落し、第2次安倍政権が発足した2012年の衆院選。政権与党に返り咲いた自民党が獲得した議席は294、野党第1党に転落した民主党の議席は57と、目も当てられない大差がついた。 さらに、新興勢力として野党第2党となった日本維新の会は、54議席を獲得した。 与党と野党第1党の議席差が5倍以上の237議席に開き、一方で野党第1党と第2党の議席差はわずか三つ。野党の中核が見えなくなり、野党内の力関係は「どんぐりの背比べ」と化した。「1強多弱」時代の始まりだった。 この選挙から数えて今回の選挙まで、衆院選は計5回行われている。 この間の自民党の議席数の推移をみると、2012年294議席→2014年290議席→2017年284議席→2021年261議席と議席を減らし続け、そして今回、ついに191議席という「与党過半数割れ」に至った。 一方、野党第1党は2017年の「希望の党騒動」で、プレーヤーが民主党から立憲民主党に交代した。 議席数の推移は2012年57議席(民主)→2014年73議席(同)→2017年55議席(立憲)→2021年96議席(同)、そして今回の148議席(同)となる。 立憲は結党以降3回の衆院選で、毎回40~50議席レベルで議席を伸ばしてきた(このように見ると、2021年衆院選後の「立憲惨敗」の評価が、いかに的外れだったかも分かる)。 そして、今回立憲が獲得した148議席は、衆院に小選挙区比例代表並立制が導入されて以降の野党第1党の獲得議席数としては、2003年の民主党(177議席)、1996年の新進党(156議席)に次ぐ第3位の記録である。 2012年時点で237あった自民党と野党第1党の議席差は、今回の選挙で43にまで縮まったのだ。