国民が持ち上げられ、相変わらず「立憲下げ」勢が多いが…「政権の担い手」へ期待背負った野党の主役は立憲民主党だ
■ 「政権を担える勢力」としての使命は大きくなっている だからこそ、立憲の責任は重大である。 実は筆者は、今回の選挙結果を受けて「自民党の下野、立憲への政権交代」まで起こすことは、まだ必要ないのではないかと考えている。 148議席という数は、安定した政権政党となるには、正直まだ心もとない。 それに、立憲が理念も基本政策も違い、政権運営への責任感も持たない中小政党を無理やり結集させて、一時的に過半数を得て政権を奪取したとしても、衆参で「ねじれ」となる国会を安定して運営するのは難しく、政権は早晩瓦解するだろう。 「非自民」勢力の目指すものがバラバラで、まともな政権運営ができなかった「平成の政治」を繰り返しかねない。 むしろ立憲は、国会の主導権を一定程度取り戻したことを、いかに政治的に有効に使うかを考えるべきだ。 政権監視と批判はもちろん重要だ。それが野党の役割だからだ。 自民党の石破政権は、裏金事件への対応をはじめ、批判されるべきことを山ほど抱えている。「批判ばかり」とやゆされても、ここは決して手を緩めてはいけない。 だが、立憲は今回の選挙の結果「自民党に代わる政権の担い手として期待される存在」であることを、明確に認知された。その期待に応える使命は、以前にも増して大きくなっている。
■ 有権者の批判は「変えられない立憲」にも向かう 立憲は今回の選挙で「政権に協力して自分たちの政策を取り入れてもらう」のではなく「国会の論戦を通じて政権と五分に渡り合い、自らの政策を実現させる」ことが不可能ではない立場を得た。この機会にぜひ「熟議の国会」を取り戻してほしい。 国会での質疑。議員立法の提出。あらゆる手を尽くして、自民党とは違う立憲自身の「目指す社会像」を、国会という「表」の場で示してほしい。 弱肉強食の新自由主義の社会を終わらせ、格差是正で「ぶ厚い中間層」を復活させる、という党の理念に沿って、自民党を揺さぶってほしい。 そして、野党であっても「国会を通して」政権与党に譲歩を迫り、政治を一歩でも前に動かせることを見せてほしい。 「有権者の一票で政治は変わり得る」ことを形にするのが、野党第1党として躍進を果たした立憲の責務である。 今回の選挙で自民党が比較第1党を得たのは、民意は自民党に「即刻下野せよ」とまでは考えなかった、ということだろう。 だが「与党過半数割れ」という歴史的な結果は「自民党政治に大きな変化を起こしたい」という有権者の意思の表れでもある。にもかかわらず石破政権は「さて選挙も終わった、ここからはまたいつも通りの政治だ」とタカをくくっているようにさえ見える。 有権者の一票によってこれだけ劇的な選挙結果がもたらされたにもかかわらず、政治に何も変化が起きなかったとしたら、その時こそ有権者は本当に政治を見捨て、投げ出してしまうだろう。 その批判は「変わらない自民党」だけでなく「変えられない立憲」にも向かうはずだ。 野田佳彦代表はじめすべての党関係者は、そのことをゆめゆめ忘れてはいけないと思う。
尾中 香尚里