海外アジア移住を伴う「越境転職」を選ぶ人たち 「成長市場で働けることが何よりの魅力」
最近一部の若手社会人の間で「越境転職」が話題になっているという。以前は国内企業の異業種・異職種への転職を指していたが、最近では文字通り国境を超えて、海外企業の現地法人で働きに出ることを指しているというのだ。 特に、東南アジアは急速な経済成長と若い人口構成を背景に、日本の若手社会人にとって魅力的なキャリアの場が生まれつつあるという。現地では、日本で培った専門スキルが評価され、管理職や専門職としてのポジションを得られる機会が豊富らしい。 ■円安で「現地通貨での給与」がメリットに 越境転職が話題となる背景には、日本の労働環境や社会に限界を感じる「停滞感」があるのは事実だろう。長期にわたって賃金が実質的に上がらず、成長が期待できないキャリア環境では、努力や実績が報われると感じる機会が少ない。 根強い年功序列や硬直的な組織文化により、若手が挑戦する機会は限られている。「働き方改革」で長時間残業は減ったものの、DXは先送りされ、効率性を欠いた働き方は依然として続き、ワークライフバランスを実現するのが難しい状況だ。 こうした閉塞感に加え、高齢化による内需の縮小や税負担の増加が、将来への不安を増幅させている。30代前後の若手社員が「このまま日本で働き続けても未来が見えない」と考えるようになっているとしても不思議はない。 若手社会人に海外転職の紹介経験がある人材会社のAさんは、かつては海外で働く場合には「日本企業の駐在員」以外の選択肢は考えられなかったが、最近では「現地法人採用」にも魅力が多いと話してくれた。 「一番わかりやすい変化は、為替ですね。円高のころは、日本で稼いで海外で使うか、日本企業に勤めて日本円で給料をもらって、現地で生活することのメリットが大きかった。でも最近は、逆に現地法人から現地通貨で給与をもらうことが、日本円でもらうよりメリットを感じられる状況にあります」 大前提として、かつて後進国だった東南アジア諸国が「新興国」として急成長し、現地法人のビジネス規模が拡大していることの影響は大きい。IMFのWorld Economic Outlookによると、2023年の実際の成長率予測値は、インドネシアが5.0%、ベトナムが4.7%、マレーシアが4.0%。日本は2.0%だ。 転職ポジションも豊富になり、給与水準も上がっている。Willis Towers Watsonの調査によると、2023年の平均給与上昇率は、インドネシアが6.5%増、ベトナムが6.5%増、マレーシアが5.0%増。都市部ではインフラや医療が発達し、生活の不安も減った。 「いま、マレーシアやインドネシア、ベトナムなど、海外に転職している人は、特に成長意欲が高い人だからなのかもしれませんが、彼らにとって、成長市場の中で実力主義が浸透した環境で働けることや、新たな挑戦を歓迎する企業文化が、日本にはない何よりの魅力だと言っています」