海外アジア移住を伴う「越境転職」を選ぶ人たち 「成長市場で働けることが何よりの魅力」
日本のメーカーで経験を積んで上位職に転職
円安がかなり進んだとはいえ、東京での生活と比べればコストは依然として安く、快適な住環境が手に入りやすい。もちろん、かつての駐在員からすれば「うまみが減った」と感じられそうだが、そこは相対的な感じ方の問題だ。 それでは、実際どんな仕事をしている人が「海外就職」を果たしているのだろうか。Aさんは一例として、日本のメーカーで5年以上調達業務に携わった経験を活かし、海外のメーカーの調達担当として働いている人の話をしてくれた。 「いまの調達業務って、オンラインのプラットフォーム上で行われることが多いので、どこで働いても一緒と思われているところがあるんですが、実は違うのだそうです。現地のサプライヤーの信頼性やカルチャーを把握するためには、現地を直接訪問して、製造工程や品質を確認することが不可欠。日本のメーカーで経験を積んできた人の中には、その経験を高く買われる人がいるんです」 調達業務は各国の規制を遵守する必要があり、現地で情報収集をすることがスムーズな業務のためには欠かせない。さらに、パートナー企業と直接会って形成される信頼関係もあり、現地で働く意味は小さくないという。 「問題が起きたときも、現地にいればすぐに駆けつけられますからね。関係ができれば、オンラインを超えた条件での取引も可能になるようです」 このほか、社会インフラ整備やプラント建設の技術者やプロジェクトマネージャー、食品メーカーの品質管理、SIerのブリッジエンジニアなどのポジションもあるという。 専門性があれば若くして上位職に就くことができ、収入も上がる。日本にいれば、東京などの都市部では家賃が高く、可処分所得が少なくなってしまうし、地方に移住しても、今度は雇用機会が少ないという問題が生じる。 「その点、私が転職先を紹介した人たちが移住した都市は、便利さとのどかさが共存しているし、場所によっては地震や台風の心配がないと喜んでいる人もいました。休日は外国人向けのリゾート地で過ごしたりして、けっこういい生活していますよ」 日本では地味で報われない仕事が、海外では意外と高く売れるかもしれない。