『虎に翼』から今に繋がる社会問題 夫婦別姓、同性婚、ヤングケアラーを描いた意義
NHK連続テレビ小説『虎に翼』の最終話まで、残すところ1カ月を切った。第23週は「原爆裁判」を本格的に描き、裁判官の寅子(伊藤沙莉)、そして弁護士のよね(土居志央梨)らは、それぞれ真摯に被爆者と向き合っている。 【写真】認知症が進行し、やつれた表情の百合(余貴美子) これまで『虎に翼』では、さまざまな社会問題を取り上げてきた。それらは現代にも通じることばかりで、いまだに解決しておらず、腹立たしいこともあれば、常に悩みが尽きない問題も。本作で描かれてきた、いくつかの社会問題を振り返ってみたい。 寅子が女学校に通っていた頃、女性の幸せは結婚することだと、家族も周囲も当然のように考えていた。母・はる(石田ゆり子)は、寅子にお見合いを勧めたが、寅子は結婚したいとは思わず、法律を学ぶ道へと進む。それは、その後ずっと続く“茨の道”への始まりだった。 寅子が弁護士を経て、裁判官になるまで、いくつもの壁が立ちはだかり、最近も後輩の秋山(渡邉美穂)の産休の件が取り上げられた。女性が社会で責任ある仕事を続ける上での障壁や男女格差といった、現代にも繋がる問題は、『虎に翼』の大きなテーマの一つだ。 寅子が優三(仲野太賀)と結婚した時は、優三の名字である佐田姓に変わったが、航一(岡田将生)と再婚する際、どちらの姓にするか、頭を悩ませることになった。佐田のままでいたい寅子だったが、自分が折れることで丸く収まるのならばと、星姓を受け入れることを決意するが、航一は婚姻届けを出さない事実婚を提案し、そのままそれぞれの名字を名乗ることに。 夫婦別姓は、いまだに法律上、認められておらず、婚姻届けを出す際には、どちらかの名字に決めなければならない。『虎に翼』では、現代にも続くこの問題を提起し、名字が変わることで生じる職業生活上の不便さや、アイデンティティの喪失などを、改めて考える機会を与えてくれた。 寅子は、轟(戸塚純貴)から、交際中だという遠藤(和田正人)を紹介された時、結婚を男女のこととしか捉えておらず、2人の悩みに想いを馳せることができなかった。後で2人に謝った寅子だったが、同性のカップルは、お互いを支え合える保障が法的にないことを実感した。 同性婚が法的に認められていない問題も、現代まで続いている。愛し合い、ずっと一緒に過ごし、暮らしてきても、公的な家族になれないし、社会的にも理解を得られない場面が多い。早急に解決すべき問題が、そのままになっていることを、朝ドラで取り上げ、多くの視聴者に知らしめることとなった。