遺す人も、引き継ぐ人も、知っておきたい「相続時精算課税制度」とは、どのような制度なのでしょうか?
「相続税が心配」と相続についての不安をもつのは、多くの場合、相続人となる子世代です。前提として、相続が発生するまでは、親の財産は親のものであり、どう扱おうと、子が口出しできるものではありません。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる? ただし、親がどのように考えているのか話をすることで、その後の相続にまつわる負担や不安を軽減することは可能です。また、対策をすることで、税負担を抑えられるのであれば、制度を活用することも選択肢となります。 本記事では、改正された「相続時精算課税制度」についてお伝えします。
「相続時精算課税制度」とは
「相続時精算課税制度」は、親や祖父母から子や孫などへの財産移転を促進し、世代間の資産移転を図る目的で設けられた税制優遇制度です。この制度を利用すると、通常、贈与時に発生する贈与税が一定額まで課されず、贈与を受けた財産は、相続時に一括で相続税の対象として精算することになります。 一定額までの贈与であれば、贈与時には贈与税を支払わずに済みますが、贈与された財産は、相続が発生した際に相続財産に算入されて相続税の対象になるというものです。 つまり、納税の先送りであり、免除ではないことに注意が必要です。制度の主旨は、資産を多く保有する親世代から子世代へ財産を移転することで、贈与と相続の公平性を確保しつつ、経済循環を目指すものです。 「相続時精算課税制度」は、贈与税と相続税に一体化を見据え、2003年(平成15年)に導入された制度です。ただ、使い勝手の悪さからこれまであまり浸透していませんでした。相続対策としては、年間110万円の非課税枠を利用した暦年課税を選択した方がたやすく、効果的であるとして、多数派でした。
2024年1月からの主な改正点「110万円の基礎控除」
2024年の改正により、「相続時精算課税制度」が一部見直されました。主な変更点としては、これまで制度を選択した場合には贈与税の基礎控除である「年間110万円の非課税枠」が適用されない仕組みでしたが、2024年からはこの非課税枠を同時に利用できるようになりました。 これにより、相続時精算課税制度を選択しても、毎年110万円までの贈与については、相続が発生した際の相続税の精算を適用しない(相続税が発生しない)範囲として処理することができ、超過分のみが相続時に精算されます。