【とっておき話】団野大成の雄たけびは苦悩から解き放たれた証し/マイルCS
<とっておき話> <マイルCS>◇17日=京都◇G1◇芝1600メートル◇3歳上◇出走17頭 ソウルラッシュ(牡6、池江)が7度目の挑戦で念願のG1制覇を遂げた。15日金曜深夜には中東バーレーンで騎乗していた鞍上・団野大成騎手(24=斉藤崇)は、魂の雄たけびでJRA・G1・2勝目を手にした。藤本真育(マイク)記者が「とっておき話」を披露する。 ◇ ◇ ◇ ゴール前の雄たけびは、苦悩から解き放たれた証しだった。団野騎手はデビューから6年の間、多くの悔しさを経験してきた。 競馬学校“花の35期生”として、19年3月に騎手デビューした。初年度はJRA26勝と悪くない数字を残したが、同期には30勝超えが3人(斎藤騎手、岩田望騎手、菅原明騎手)いて、自身は4番目だった。 JRA42勝を挙げた斎藤騎手がJRA賞最多勝利新人騎手。翌20年にはラブカンプーでCBC賞を勝利し、重賞一番乗りも奪われた。 岩田望騎手は2年目にJRA76勝と飛躍。リーディング9位でトップ10入りし、4年目にはJRA年間100勝も先に達成された。 「僕らって同期全員が同い年で仲が良くて、お互い『おめでとう』と言い合うんですけど、毎回、悔しさの方が勝っちゃって…。心の底からおめでとうって言えないんです」 悔しさをばねに-。デビュー5年目の昨年、高松宮記念をファストフォースで制し、同期では一番乗りとなるG1初制覇を挙げた。待ちに待ったG1タイトル。喜びもひとしおだろうと思って祝福したが、少し様子が違った。 「すごくうれしいんですが、若手のG1初制覇って短距離(スプリント)が多いんですよね。だから、マイル、中長距離のG1を勝ちたいです」 「団野って短距離だけやんな」。そう言われないように、乗り方をひたすら研究した。川田騎手など先輩にも積極的に話を聞きに行き、時には動作解析も取り入れた。海外のG1、重賞にも騎乗し、知識を得て、改良に改良を重ねた。 そうやってつかんだマイルCS制覇。苦悩を糧に、騎手・団野大成がひと皮むけた瞬間だった。【中央競馬担当=藤本真育】