日ハム時代の"師弟"大谷翔平&近藤健介が同時達成!? 日米「三冠王」への道
■近藤は5番固定で打席数が少ない 一方の近藤は、6月に打率.413、7本塁打、23打点で月間MVPを受賞。大谷から〝6月男〟のお株を奪うかのような活躍を見せたが、7月は一転、月間打率1割台、本塁打0本と失速してしまった。 「6月中旬に守備で右手の指を捻挫してしまった影響が大きかったようです。痛みを抱えながらもうまく打てるカタチを見いだして好結果を生んでいましたが、7月に入って指が治ったことで、逆にこれまで良かった感覚がズレてしまったのかもしれません」 まずはいい状態を取り戻すことが三冠王への必須条件だが、近藤の場合はチーム事情も勘案する必要があるという。 「今季の近藤は5番固定でそもそも打席数が少ないです」 振り返れば、二冠王に輝いた昨季は、シーズン序盤は3番、後半は4番に座っていた。今季は3番・栗原陵矢、4番・山川穂高の後ろを打つ5番に固定されている。 「個人的には、出塁率が4割を超える近藤は2番か3番が適任だと思います。ただ、一見、非合理的に感じる5番起用ですが、ここぞでランナーをかえす役割でチームの勝利につながっている面もあるため、簡単な話ではありません」 現在、63打点でリーグ1位のネフタリ・ソト(ロッテ)を15差の4位で追いかける近藤だが、2位には山川(61打点)、3位には栗原(52打点)とチーム内でも争う状況となっている。 打率では1位の近藤と2位の佐藤都志也(ロッテ)は2分以上の差があり、本塁打では1位の山川や2位で並ぶ万波中正(日本ハム)らと競り合うだけに、三冠王を狙う上では、得点圏にランナーを置いたチャンスの場面でどれだけ打席が回ってくるかがカギを握るだろう。
■大谷が狙う三冠王以外の偉業 現在の打撃状態やライバルたちの存在も鑑み、三冠王達成のための課題は何か? 実は大谷も近藤同様、打順に問題を抱えている。 「ベッツの離脱以降、定位置となった1番では打点がどうしても稼ぎにくい。この打順に加え、今の打撃スタイルの問題もあってか、今季はまだスリーラン、満塁ホームランを打てていません。得点圏打率の低さが一時期話題になったように、最難関は打点王のタイトルです」 バットを構える位置がやや高めの現在の打撃スタイルの問題点はなんなのか? 「グリップ位置が高くなると、スピードボールやクイックでの投球に遅れて対応しがち。状態が良ければ驚異的なスイングスピードで対応できますが、状態が悪くなるとどうしても差し込まれがちに。 得点圏打率が低いのは、結果を出そうと気負いすぎてボール球にも手を出してしまうことに加え、得点圏では投手のモーションが速くなるため、必然的に差し込まれてしまうからです」 ただ、こうした課題こそ、大谷をさらに成長させるエネルギーになりうる、とお股ニキ氏は語る。 「大谷はこれまでも、『無理』『弱点だ』と言われるほど、よけいにその状況を克服したいと考え、実際に何度も壁を乗り越えて今の地位を築いてきました。 今季は大型契約初年度であり、エンゼルス時代には経験したことのない優勝争いが本格化していく今後は今まで以上にプレッシャーがかかり、どうしても力んでしまうと思います。それでも大谷なら苦境で結果を出すためにどうすればいいか、しっかり考えて対応してくれるでしょう」 現在、ドジャースもソフトバンクも優勝へ向けて独走状態だが、このチーム状況が個人成績に与える影響は何かあるのだろうか? 「ふたりともWBCでは勝つための野球を徹底して優勝した経験がありますし、結果を追い求めることで個人成績も伸びる可能性が高いでしょう」 また、「偉大な打者ほど、どのような場面でも集中力を発揮する」として、往年のレジェンドの名を挙げてくれた。 「〝本物〟はどんな状況でも結果を出すもの。王 貞治さん(元巨人)や落合さんは勝ち越した後の4打席目でダメ押し弾を打てる選手だったそうです。常勝軍団のスター選手という点で、大谷にもそういうプレーを期待したいです」 さらにお股ニキ氏は、「大谷には三冠王以外にも目指してほしい偉業がある」と続ける。 「すでにキャリアハイの27盗塁を記録していて、『30-30(30本塁打&30盗塁)』の達成はほぼ確実。私が開幕前から『打者専念シーズンだからこそ、ぜひ狙ってほしい』と言っていた史上6人目の『40-40(40本塁打&40盗塁)』も大いに可能性があります。ここから大爆発があれば、史上初の『50-40(50本塁打&40盗塁)』も夢ではないかもしれません」 一方の近藤も、三冠王達成となれば、パ・リーグではちょうど20年ぶりの快挙だ。昨季は8月に月間MVPを受賞するなど夏の暑さも苦にしないだけに、海を越えた師弟コンビの共闘に期待したい。 文/オグマナオト 写真/時事通信社