コーヒーを通じて広がる地域とのあたたかな絆。ひたちなかで見つけたスターバックスの新たな役割
2024年11月9日と10日に、茨城県ひたちなか市の親水性公園で開催された「HITACHINAKA COFFEE FESTIVAL 2024」。そこに、全国に出店しながら、地域ごとの個性を大切にするスターバックスが、このイベントに初参加した。 大人も子どもも一緒に同じコーヒーを味わいながら、スターバックスの取り組みなどを学んだ 青空の下、芝生に広がるテントとレジャーシート、漂うコーヒーの香り。スターバックスが提供したのは、コーヒーを通じて地域と心地よくつながる特別な空間だった。スターバックスが用意したのは、「Coffee Picnic @HITACHINAKA」というイベントテーマの中で考案した、3つのコンテンツ。それぞれが違う角度から地域や環境、コーヒーの魅力を伝える仕掛けだ。 まずは「フードペアリング体験」。クリスマスブレンドとブラウニーのフードペアリングを通して、新しい味わいの発見が広がるひととき。コーヒーの深みとスイーツの甘さが交わる瞬間に、参加者の驚きの表情が印象的だった。 次に「Kidsバリスタ」。使い終わったコーヒー豆袋をリメイクして、自分だけのオリジナルアイテムを作る体験。小さな手が動くたびに、完成するのは世界で一つだけの作品。子どもたちの目がキラキラと輝いた。 そして「サステナビリティワークショップ」。紙芝居でコーヒーからたい肥になって終えるまでのストーリーを学び、その後は苗木を鉢植えに植える体験へ。自然とのつながりを考えながら、丁寧に土を触る姿が心に残る。 全国展開するブランドでありながら、地域ごとに個性を重視し、人々とのつながりを大切にするスターバックス。コーヒーを通じて広がる笑顔と交流。地域とともに未来を考える場を作り上げたその姿勢は、多くの人に温かい印象を残した。今回は、ひたちなかニューポート店のストアマネージャーを中心としたパートナーたちの取り組みを、インタビューを交えながらリポートする。 ■スターバックスの参加で、市街地活性化を目指す「HITACHINAKA COFFEE FESTIVAL」に現れた変化 「最初は、ニューポートひたちなか店で働いている知り合いに軽く声をかけたんです。『スターバックスは出てくれるかな?』と思いながら。でも、店長さんが『ぜひやりたい!』って乗り気になってくれて。そこから本部や地区のマネージャーにも話が進み、驚くほどスムーズに参加が決まりました」 ひたちなかコーヒーフェス実行委員長の関山大介さんが語る、スターバックス初参加の裏話。「HITACHINAKA COFFEE FESTIVAL 2024」は、スターバックスが加わったことでイベントはさらに広がりを見せた。 このフェスの原点は2020年のコロナ禍だ。観光資源が海沿いに集中しているひたちなか市では、毎年恒例のロックフェスなど夏のイベントが軒並み中止となり、大きな経済的打撃を受けた。「このままではダメだ。何かやらないと」という想いで立ち上がった地元の中堅層が、車に乗ったまま楽しめるドライブイン形式のフェスを海沿いで実施した。 2年間にわたって開催されたこの挑戦を経て、2022年には新たな方向性が生まれた。それが、市街地の活性化を目指したコーヒーフェスだ。 「市街地は空洞化が進んでいました。そこで、公園を活用して街の中心でイベントをやろうと決めました」と関山さん。当初は小規模なイベントだったが、地元の協力を得ながら規模を拡大。今年は全国から約100店舗が参加する大イベントへと成長した。 そんな中、スターバックスの参加がもたらした影響は大きい。「どうしてもコーヒーフェスはマニア向けの印象が強くなりがちです。でも、スターバックスが加わったことで、敷居がぐっと下がりオープンな雰囲気になりました。『あそこなら私も行けるかも』と感じてもらえるようになり、幅広い層に楽しんでもらえました」 関山さんは、「スターバックスはコーヒーを売るだけでなく、人とつながり、地域を大切にするブランド。その姿勢が、フェスの理念とも一致していました」と語る。 海沿いで始まり、市街地へと移ったこのコーヒーフェス。地域の未来を描く挑戦は、スターバックスをはじめとする参加者の力でさらに広がりを見せている。 ■青空の下で楽しむコーヒーと地域の新しい形。「Coffee Picnic @HITACHINAKA」の3つの体験 青空の下、コーヒーを通じて地域とつながる特別な体験。「Coffee Picnic @HITACHINAKA」では、「フードペアリング」「Kidsバリスタ」「COFFEE苗木植え体験」の3つのプログラムが、多彩な発見を届けた。 「コーヒーはコーヒー、食べ物は食べ物。そんな感じで、これまでペアリングを考えたことはありませんでした」。栃木県宇都宮市から訪れた青柳さんは、娘さんと参加した「フードペアリング」ワークショップで、コーヒーとスイーツの組み合わせに驚きを感じたという。 ワークショップは、香りの実験からスタート。鼻をつまんでジェリービーンズを食べるとぼんやりしていた甘みが、指を離した瞬間に広がる。この体験に、「香りと味の関係がこんなにも重要だとは思わなかった」と青柳さんは感心した様子を見せた。その後のスターバックス クリスマス ブレンド エスプレッソ ローストとブラウニーのペアリングでは、深煎りコーヒーのコクと濃厚な甘みの調和をじっくりと味わい、「今日のフードペアリング体験も、甘いものと合わせる楽しさを再確認できて良かったです。普段はナッツ系や焼き菓子が好きです。特にコロンビアの豆と焼き菓子の組み合わせは相性が良いですね。焼き菓子屋さんで楽しむこともあります」と娘さんが微笑んだ。 ファミリーで参加した荒川さん夫婦も、ペアリングの新鮮さに感動していた。「普段は浅煎りの酸味があるコーヒーを飲むことが多いんですが、今日の深煎りは全然違いました。苦味があるからこそブラウニーの甘さが引き立つのが新鮮でした」とご主人。奥さまも、「酸味のあるコーヒーにはフルーツ系のスイーツが合うと聞いて、次はフルーツタルトに挑戦してみたい」と目を輝かせる。 さらに荒川一家は、自宅でのペアリングについても興味を広げた様子。「おはぎとコーヒーを合わせたことがあるんですが、意外と合うねと話していて。和菓子との組み合わせももっと試してみたいですね」とご主人は語る。一方で、「普段ブラウニーはあまり食べません。でも、チョコレートやクッキーならよく食べるので、今回の体験を家でも試してみようと思いました」と奥さま。 「今回の体験を通じて、家族でコーヒーの話をする時間が増えそうです」と語った青柳親子や、「新しい発見がいっぱいありました」と笑顔を見せた荒川ファミリー。コーヒーを通じて、家庭や日常にも小さな変化が生まれるワークショップだった。 ~担当者の声~ 地域に根ざした店舗の想いが詰まったフードペアリング体験 「お客様が『おいしい!』って驚いた表情を見るたびに、この体験を企画して良かったと思います」スターバックスコーヒー ひたちなか西光地店のストアマネージャー、松崎さん。 今回のペアリングには、深いコクと酸味が特徴のクリスマスエスプレッソローストを選定。「チョコレートとの相性が抜群で、ブラウニーの甘さを引き立てるこの豆が最適でした」と松崎さん。香りの実験でジェリービーンズを使い、味覚と香りの関係を体験した参加者の驚きの声が印象に残ったという。 「豆は農作物なので、毎年少しずつ風味が変わります。その年ごとの味を感じてもらうのもペアリングの楽しみの一つです」と松崎さんは話す。ペアリング体験は、その変化を楽しむ絶好の機会だと語る。 また、お店での人気ペアリングについて、「スマトラとシナモンロールの組み合わせが特に好評です」と教えてくれた松崎さん。コクのあるスマトラの味わいとシナモンの香りが寒い季節にぴったりで、長年パートナーたちにも愛される定番の組み合わせだという。 「コーヒー単体でも十分においしいですが、フードと合わせることで生まれる新たな発見があります。それが楽しさにつながり、またお店へ足を運ぶきっかけになればうれしいです。今日のコンテンツも、そんな発見を届けられるように企画しました」と語ってくれた。 ■「Kidsバリスタ」で作りながら学ぶ、アップサイクルする楽しみ 「こんな簡単に作れるんだって驚きでした!」。コーヒー豆袋をリメイクして作ったコーヒーパスポートカバーを手に、参加した更(さら)ちゃんは、キラキラした笑顔を見せてくれた。「Kidsバリスタ ~豆袋リメイクワークショップコーヒーパスポートカバー編~」では、子どもたちが、リサイクルに挑戦する姿が印象的だった。 ワークショップの始まりは、リサイクルの話。「家でリサイクルしたことある?」という問いかけに、「ペットボトル!」「ダンボールを宝箱にしてる!」と子どもたちの元気な声が飛び交う。スターバックスでのリサイクル事例としてコーヒー豆のカスをたい肥や牛のエサとして活用していることが紹介されると、子どもたちは興味津々の様子。「コーヒーって飲むだけじゃないんだ」と、日常で何気なく目にするものが自然とつながることに新たな気づきを得ていた。 続いて、実際にコーヒー豆袋を使ったパスポートカバー作りに挑戦。使い終わった豆袋を切り開き、好きなデザインを選んで組み立てる作業は、子どもたちにとって楽しいクリエイティブな時間だった。完成したカバーを手にした更ちゃんは、「たぶん家でもできる!」と、自分で作ったものへの誇らしさを語る。 「子どもたちがこういう形でリサイクルに触れられるのはすごく良いと思います。スターバックスがこんな風に環境を考えた活動をしているとは知らなかったので、驚きました」と話すのは、更ちゃんのお父さん。親子での参加を通じて、スターバックスの新しい一面に気づくきっかけになったという。 笑顔で楽しむだけでなく、リサイクルや環境への意識を自然と学べる「Kidsバリスタ」。自分で作り上げたパスポートカバーには、今日の体験とともに、未来への小さな種が込められている。 ~担当者の声~ 「Kidsバリスタ」で広がるリサイクルの輪 「地元の方がたくさん参加してくださっていて驚きました。2、3歳のお子さんが『ブラックのコーヒーを飲んだことがある』なんて話してくれて、少し意外でしたね」スターバックスコーヒー 水戸県庁前店のストアマネージャー、中島さん。 「柄を選ぶ楽しさがあったり、完成した時に『世界に一つだけの自分のコーヒーパスポート』ができる喜びが伝わってきました」と中島さんは子どもたちの笑顔を振り返る。 「袋の上下を切って筒状の部分を開くだけ。作業自体がシンプルなので、小さなお子さんでも楽しめる内容になっています」。最年少で3歳のお子さんも参加し、親子でリサイクルを楽しむ姿が印象的だったという。 「コーヒーやエコ活動に興味を持つお子さんもいて、ご家族で小さい頃から環境保護に取り組んでいる様子が感じられました。カジュアルに楽しみながら、リサイクルの大切さに触れてもらえたことが何よりうれしいですね」と中島さんは語る。 ■「COFFEE苗木植え体験」で学ぶ、コーヒーと環境のつながり 「コーヒー豆かすが牛のエサになっているとは知りませんでした」。藤本ファミリーが参加した「COFFEE苗木植え体験」では、紙芝居と苗木植えを通じて、コーヒーと環境がどのように関わっているかを楽しく学ぶ時間が広がっていた。 ワークショップのスタートは、スターバックスが用意した紙芝居「コーヒー豆の〇〇くんと△△ちゃんの体験」。畑で育てられたコーヒー豆が海を越え、カフェでおいしいコーヒーとなり、人々を笑顔にする旅が描かれる。その後、豆かすが肥料や牛のエサとして活用され、野菜や牛乳となって再びカフェに戻るという循環のストーリーに、子どもたちからは「飲んでも、また帰ってくるんだね」と共感の声が上がった。 紙芝居が終わると、いよいよ苗木植え替え体験へ。白い植木鉢に家族で絵を描き、個性豊かな鉢が次々と完成した。藤本さんファミリーも、「家族で一緒に絵を描いたりできるのはいいですね」と笑顔を見せる。そして、完成した鉢にコーヒーの苗木を丁寧に植える子どもたちは、「大きく育ってね」と声をかけながら土を触る姿がまるで小さな農家さんのようだった。 「スターバックスがこういう環境への活動をしているとは知らなかったですね。SDGsには取り組んでいるイメージがありましたが、具体的にこういう形で見えるとすごく良いですね」と話す藤本さん。イベントを通じて、コーヒーが持つ循環の力を改めて実感する機会となったようだ。 完成した苗木を手にした子どもたちの満足げな表情は、これからの日常に小さな楽しみが増えたことを物語っていた。紙芝居と苗木植え体験で、コーヒーが生み出す未来と環境へのつながりを感じるひとときだった。 ~担当者の声~ 「COFFEE苗木植え体験」で感じた、循環と共有の大切さ 「お客様がたくさんいらっしゃって、みんなちょっと緊張しながらのスタートでした。でも、『楽しかった』『あ、そうなんだ』という声がたくさんいただけて、本当に良い体験になりました」スターバックスコーヒー ひたちなか西光地店のストアマネージャー、松崎さん。 「スターバックスがこんな形で環境への取り組みをしていることを知らない方も多くいらっしゃいました。今回のような体験を通じて、そのことを伝えられたのは大きかったです」と松崎さん。 「実際に参加したパートナーたちも、循環の仕組みを改めてお客様に伝えることで、自分たちの知識が深まりました。その経験を共有して、店舗の日々の接客の中で自然にお客様に伝えられる機会を増やしていきたいと思っています」と語る。 「店舗ではドリンクのお話や別の話題が多いので、サステナビリティについても一つの話題として取り入れていくのも良いのかなと思います」と松崎さんは続ける。体験を通じて得た学びを、店舗運営や日常のコミュニケーションへどう活かすか、そのヒントを得られたイベントとなったそう。 ■スターバックスのパートナーと地域がともに育む未来 スターバックスコーヒー ニューポートひたちなか店のストアマネージャー、佐藤さん。今回のイベントに中心的な役割で参加した彼女は、最初の不安を乗り越え、地域の未来を見据えながら全力で挑んだ。「Coffee Picnic」というテーマのもと、サステナビリティや地域貢献を意識した内容を作り上げた背景には、店舗を超えた仲間たちとの議論や協力があった。イベントを通じて得たものは、お客様の笑顔だけではない。パートナーたちが地域の一員としての自覚を深め、店舗としての役割を再認識する貴重な機会ともなった。佐藤さんが語る地域への想いと、イベント参加への想いを伺った。 ーー今回参加されてみて、いかがでしたか? 最初は不安もありました。でも、スターバックスがひたちなか市にある意味を改めて考えたとき、このイベントに参加できたことを本当に幸せに感じています。お客様の笑顔や、一生懸命取り組むバリスタたちの姿を見ると、不安は吹き飛び、喜びでいっぱいになりました。 ーー参加の経緯について教えてください。 夏頃に実行委員長の関山さんが店舗にいらっしゃり、「こういうイベントを考えているんだけど」とお話をいただいたのがきっかけです。私も最初は「こんな大きなイベントに参加して大丈夫だろうか」と不安でしたが、上司の安齋さんに相談したところ、「一緒にやってみよう」と背中を押していただき、チーム全体で一歩を踏み出せました。 ーー今回のコンテンツはどのように作られたのですか? 「Coffee Picnic」というテーマからスタートし、ただおいしいコーヒーを提供するだけでなく、サステナビリティや地域貢献を意識した内容に仕上げました。ひたちなか市の発展を考えつつ、他の店舗の店長やストアマネージャーたちと議論を重ねてターゲットや具体的な企画を詰めていきました。 ーー参加店舗はどれくらいの規模でしたか? ひたちなか市内にある4店舗に加え、水戸や日立市など周辺エリアの店舗も参加し、バリスタやストアマネージャーを含めて8~9店舗が協力しました。 ーー今回の経験をもとに全国の仲間に伝えたいことはありますか? 地域のお客様にもっと何かを届けたいと思っていても、やり方がわからなかったり、一歩踏み出せないこともあると思います。でも、ほんの少しの勇気やきっかけが、こんな大きなイベントにつながることもあると伝えたいです。スターバックスはコーヒーを売るだけではなく、地域の未来や発展を考える存在です。今回のような活動を通じて、私たちの想いや地域の方々の気持ちを感じる機会がもっと広がればと思います。 ーー最後に地域への想いを聞かせてください。 ひたちなか市の人たちは本当に温かいです。住んでいる街だからこそ、日常の中でそれを強く感じます。また、市役所の方々や地域の取り組みを見ていると、みんなで未来を作っていこうという姿勢が伝わってきます。この街の人たちが満足し、自分の街を誇れるような活動をこれからも続けていきたいですね。 全国に広がるスターバックスは、それぞれが地域ごとの個性を生かし、温かいつながりを育んでいる。今回のイベントで見られたのは、コーヒーを通じて地域に貢献し、新しい発見や笑顔を届けようとするパートナーたちの姿。その取り組みは参加者の心に響いただけでなく、パートナー自身にも大きな気づきと自信を与えた。地域との絆を深めていく中で、店舗が持つ役割やコーヒーの力を再認識する機会となった。 コーヒーの香りだけでなく、その先に広がる環境への想いや、人と人のつながりを実感できる特別なひととき。スターバックスが目指すのは、ただおいしいコーヒーを届けるだけではない。地域の未来をともに考え、暮らしの中に新しい価値を生み出すこと。その挑戦は、これからも続いていく。