吉野家、ダチョウ丼の勝算 河村社長「牛丼依存脱却へ5000羽飼育」
吉野家と同じサイズの業態に勝機
グループでは牛丼依存の脱却が大きな経営課題です。長期的にダチョウに期待するとして、短期的にはどうですか。 河村氏:今注目しているのはラーメンです。当社は30年ほど、M&A(合併・買収)を含めて牛丼以外の事業を模索してきましたけど、結局、事業として成立させられたのは「はなまるうどん」だけなんですよね。 他の育たなかった事業と、はなまるうどんとを比較して何が違ったかというと、僕は一番影響が大きいのは、店の規模感だと思います。はなまるうどんは店のサイズが吉野家と同じぐらいだったため、有形無形の経験が生かせたと思います。 例えば、吉野家を1店舗建てる時に必要な投資に対して、ファミリーレストランは投資額が2倍くらいになります。怖いんですよ。投資額が安くても同じです。かつてグループでたこ焼き店をやったことがありますが、これは吉野家と比較して格段に低い投資額で出店できました。「この場所で本当に商売が成立するの?」と逆に不安になりました。 うちが手掛けているような(「せたが屋」などの)ラーメンは、国内で大きい方ではないです。こういうところはやっぱり(吉野家の)ノウハウが生きます。ラーメンに限らずですが、今後M&Aを行う時は店舗当たりの投資額が近いとか、店舗のサイズが似ているとか、そういった点を一つの基準にしようと思っています。 ラーメンは海外でも出店を進めていますね。 河村氏:すしの次にグローバルフードになる和食はラーメンだと思います。現在、ラーメンは米国やアジアなどに店舗を構えています。今後は欧州や北米など、アジア以外の国が伸びていくと思います。しかも、牛丼やうどんよりも客単価が高いですから、ビジネスとしても期待が大きいです。 主力の吉野家事業では、どのようなことに力を入れているのですか。 河村氏:吉野家では、16年に導入を開始したクッキング&コンフォート(C&C)タイプのお店を引き続き増やしています。今でも、カウンターがあってそこでおじさんたちが牛丼をかきこんでいるというイメージで見られることが多いですけれども、C&Cタイプの店舗では、ゆったり座れるソファ席を設け、ドリンクバーや充電用のコンセントを設置しています。 その効果は。 河村氏:以前は9割近くだった男性比率が下がり、女性比率が29%くらいになりました。10年かかりましたね。ただ女性比率30%の壁がなかなか越えられないです。 客層を広げるという意味ではテークアウトやデリバリーの専門店も増やしています。ここは女性比率が5割です。テークアウト専門になると気軽さが増すというか、やっぱりおじさんが牛丼をかきこんでいるところにお弁当を買いに行きたくないようです。 24年に入ってから専門店の売り上げや客数が予測に達しない場合があったので急ブレーキを踏みまして、出店済みのお店の立て直しに入りました。夏以降は再び客足が戻ってきたので、今後も出店を進めていきたいと思います。来期については検討中ですが、今期以上に出店を拡大させたいですね。テークアウト店専用のメニュー開発も検討しています。