【東京建築祭】「教文館・聖書館ビル」アントニン・レーモンドの戦前の名建築ガイドツアーに潜入レポート! 文人に愛されたモダニズム建築を追体験 東京都・銀座
エントランスに戻ると、社長の渡部さんが当時のエピソードをいくつか紹介した。教文館ビルの1階と地下に、当時では珍しい「富士アイス」というモダンなレストラン・パーラーがあったこと。まだコーヒーに馴染みがない時代だったので、ブラジル大使の依頼を受けたレーモンドが、聖書館ビルの1階に、「ブラジルコーヒー」を設計した。そこには、レーモンドと親しかった画家の藤田嗣治の「大地」という壁画があったが、閉鎖に伴い壁画はブラジルに渡り、今は広島のウッドワン美術館が所蔵しているという。 なお、聖書館側の外壁に4つのレリーフがあったが、今もその1つが残っている。ぐるりと回れば見つけられるので、読者の方も探して当時の面影を感じてほしい。 ガイドツアーが終わった後、参加者に感想を聞いた。「ダストシュートなど当時のものがまだ残っているのが、素晴らしい」といった声や、「社長さんからじかに、建物の歴史を聞くことができてよかった」という声があった。レーモンド設計の建築を長く見守り続けた人が、ガイドとして解説してくれるだけに、単なる解説にとどまらない思いも伝わってくる。それが、こうした企画の魅力だろう。 さて、こうした解説付きで建築について学べる機会、ましてや、通常は非公開の部分に入り込んで解説してもらえる機会というのは、そう多くはない。東京建築祭ならではの限定企画は、そうした機会を得られる場でもある。キックオフイベントやガイドツアーを追体験していただこうと記事にまとめたものの、情報が多すぎてすべてを盛り込めないことが残念だ。 限定企画に参加するには、早期に情報を入手したり、強運で当選を引き当てたりする必要もある。来年に東京建築祭が開催されたら、ぜひ早めに動いてほしい。それでも、限定となると、機会を得るのはなかなか難しいかもしれないが、一方、東京建築祭では事前申し込みが不要な「特別公開」が多数ある。それをどう楽しむかについては、別の記事で紹介したい。 ●関連サイト 東京建築祭公式サイト
山本 久美子
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