考えさせられるハガキ、ほろりとさせるハガキ、ぷっと吹き出してしまうハガキ……。漫画家・やなせたかしさんが、あまりにも悲しい「ごめんなさい」は選ばなかった理由
ぷっと笑わせるようなハガキも入賞
一転して、人を楽しませることが大好きだったやなせさんは、ぷっと笑わせるようなハガキも選んだ。 〈おばぁへ 私が小学校の頃、おばぁの誕生日にあげたひまわりの種、実はハムスターのエサだったんだ。幼かったから種とエサの区別がわからなかったんだ。悪気は無いんだよ。ケド、おばぁは、一生懸命水をあげていたよね… 母から聞きました。 亡くなる前に言いたかった。 本当にゴメンね…。(第2回)〉 ハガキの縁にはヒマワリがたくさん描かれていた。真ん中には、植木鉢にジョウロで水をやり、芽が出ないのを「?」と思う「おばぁ」がいる。 〈大事な大事なだんな様へ だんな様のだいすきな「ハンバーグ」を作ろうと思った時のこと… つなぎに使う牛乳がなくて母乳をしぼっていれちゃった “おいしい”ってたべてくれたけど… 次はちゃんと牛乳使うからね ごめんなさい いつも“おいしい”って食べてくれてありがとう 大スキです(第3回)〉 文章にはハートのマークがいくつも入れてあった。 〈 小さいころ、パパのザリガニを、ママとたべちゃってごめんなさい!! だけど、すごくおいしかったです(第4回)〉 赤いザリガニが笑っている絵が大きく描かれていた。 〈 長男が小学校の修学旅行の時、持ち物に名前を記入との事。長男に書かせればいいものを私は全てに息子の名前を記入。 「名前書いちゅうきねえ」 点検のため学校に持参。ところが帰って来るなり息子の一言「名前がちごうちゅう」 見てびっくり。息子の名前でなく なんと、私の名前が書いてあったのです。 その時は、つい笑ってごまかしました。 なんぼか恥ずかしかったろう。息子 あの時は、ごめんなさい。 ドジな母でごめんなさい。(第5回)〉 地元の南国市の人だ。息子のパンツなど、女性が自分の名前を書いたであろう下着のイラストが添えてあった。もし点検がなかったら、息子は同級生の前で女性の名前が書かれた下着をはくことができたかどうか。