知的障害者初の国連障害者権利委員、ロバート・マーティンさんが講演 「施設の中では自分の人生を選べない」「今こそ脱施設化に焦点を」
「施設から地域へ」という予算配分を
シンポジウムでは、主催団体の一つである「DPI日本会議」副議長の尾上浩二さんもコメンテーターとして登壇し、今後、日本が「脱施設」を推進する上で必要なことなどについて語った。 概要は以下の通り。 「脱施設」というと、現実離れしたことをいっているという見方をされるが、「当たり前にすでに施設が閉鎖されている」「脱施設が前提になっている」という国の話を聞けた。障害者権利条約がいっていることは決して絵空事ではないことを確認できた。 日本で「地域移行」というようなことが言われ出してもう15年ぐらいになる。しかし、2005年から2015年の10年間で1万6000人の人しか地域移行できていない。全体で言うと1割だ。この調子で行けば、施設がなくなるまで100年間かかる。私たちは、ずっと施設がある日本社会のままでいるのか。 (障害者権利委員会から日本政府に出された)総括所見は、入所施設に当てられている予算を地域生活支援に再配分して脱施設化を進めるよう求めている。現在、総括所見後初となる障害福祉の報酬改定が議論されているが、ここでちゃんと「施設から地域へ」という予算配分がなされるかどうかが重要だ。特に、地域生活を進める上で不可欠な重度訪問介護を行う介護者の確保が(報酬単価が低いために)極めて難しい状況にある。本当に地域移行をやろうとするなら、こうした部分への重点的な予算配分を今こそ実現すべきだ。 日本の場合、施設や病院からの地域移行もなかなか進んでいないが、一方で施設に入れてほしいという施設待機者が多いともいわれる。しかし、それは本人が希望したというのではなく、これまで介護に当たっていた家族が高齢になり、自分に何かあった時にどうするかといった「親亡き後の不安」ということによるものだと思う。「施設に入りたい」というより「地域で暮らせるかどうかが不安だ」ということなのだと思う。 だからこそ地域で暮らせる支援につなげていくことが大切だ。地域移行といった場合、施設や病院からの地域移行と、日本の状況でいうと、親元や家族から一人暮らし等への移行がある。この二つが重要だ。この二つの地域移行を飛躍的に進めていくことにより、施設から出ていくのと同時に、新規の施設入所も防いでいく。そして、結果として施設がなくなっていく。そういう目標や計画を、障害当事者と政府が一緒に作っていくことを、私たちは求めていきたい。