東日本大震災のボランティア志願者へのメッセージ(フィールドライフ2011年春号掲載)
過度にのめり込まないで。キミはある日いなくなるのだ。
長くボランティアをしていると、被災者の人たちとも個人的に仲良くなる。なかにはまるで家族のような関係になる人もいた。僕らの仲間のなかには復興支援のために神戸に移り住んだり、ボランティアをきっかけに地元の人と結婚した人もいる。喜ばしい話だし、そういう人の深い愛情には心を打たれる。 でも残念ながらそれとは逆の現実を見ることもあった。たとえば被災者とものすごく深く付き合っていたはずのボランティアが、ある日突然一方的に関係を切ったりするのだ。 僕の知っているあるボランティアは誰にも何もいわず突然消えてしまった。噂によると彼はまったく別の災害ボランティアに向かったらしかった。避難所で彼と仲のよかったおばあちゃんから「最近見ないけど、○○さんはどうしているの? 」と淋しい顔で聞かれたとき、僕はどう言っていいかわからなかった。 人と人との関係は、それぞれだ。 外野の僕がどうこういう話ではない。でも被災地の人間関係はとてもセンシティブだ。お互いのプライベートまで踏み込むような過度の同情やシンパシーは、もしかしたら控えたほうがいいかもしれない。少なくとも短期のボランティアの場合は過度ののめり込みはやめた方がいいと思う。そのあたりはひとりの人間としてキチンと考えること。
ボランティア後方支援も立派なボランティアだ。
神戸に入って1か月ほどたったある日、東京の友人が義援金を届けてくれた。数十万円の郵便貯金だった。バイク仲間やアウトドア仲間に声をかけて集めてくれたという。僕はありがたく頂戴し、日本赤十字社チームに渡そうとした。ところが彼は「違うよ。これは被災者への義援金じゃなく、ジュン君たちボランティアに使ってもらうために作った金だ」といった。 おどろいた。 本当におどろいた。 ボランティアを続けるには金がかかる。その間まったく収入がないし、活動費や滞在費がどんどん出て行く。それを覚悟で来ているのだが、現実的にはカツカツで、金の心配はずっと絶えなかった。だからこのお金は涙がでるほどありがたかった。僕やスタッフが長く被災地に留まりそこで働けたのは、仲間が作ってくれたこの金のおかげだった。 この基金を呼びかけてくれたのはカメラマンの山田周生さんだ。彼は使用済みの食用油で走る「バイオディーゼル車」で世界一周を成し遂げた冒険家でもある。 先日ニュースで知ったのだが、周生さんは今、バイオディーゼル車と天ぷら廃油カーで東北の被災地を回りながら、ボランティア活動を行っているそうだ。 今度は僕が後方支援をする番だと思っている。東京でガンガン金を作って、ぜひとも助けたい。 ボランティアというのは被災地でカラダを動かすことだけじゃない。ボランティアが頑張れるように力を出すのも立派なボランティアだということを、キミにはぜひ知っておいて欲しい。