パワハラで名門ラグビー部をクビになった監督が省みる「私の大きな間違い」
流通経済大学付属柏高校ラグビー部を強豪校に育て上げるも、部員への体罰によって解任された松井英幸氏。そんな松井氏が、みずからが固執してしまった指導法や押し付けてしまった一方的な正しさについて、振り返った。本稿は、松井英幸『パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気』(アチーブメント出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● パワハラというものを 非常に軽く見ていた 私がパワハラ問題で、2015年に流経大柏高校ラグビー部の監督を辞任してから、8年の月日が過ぎた。 私なりの責任の取り方として、選手たちを直接現場で指導することからは、今でも距離を置き続けている。 かつての自分を振り返って改めて思うのは、私自身がパワハラというものを、非常に軽く見ていたということだ。 批判を恐れずにいえば、スポーツ指導の現場には、今もそういう風潮が根強く残っているような気がする。 実際に、いわゆる「スポハラ(スポーツ・ハラスメント)」が増加の一途をたどっている。 公益財団法人日本スポーツ協会(SPO)は、スポーツにおける暴力行為やハラスメント、その他不適切な行為などの相談窓口を設け、窓口に寄せられた相談件数を公開している。 同協会によれば、2023年度に窓口に寄せられた相談件数は過去最高の185件と、前年の約1.3倍になった。2020年度、2021年度は、コロナ禍の影響で相談件数が減少したことも影響しているが、2022年度は、相談件数は前年度の約2倍に増えていた。
相談内容も年を追うごとに変化が見られる。相談件数をカウントし始めた2011年は暴力が31パーセントともっとも多かった。ところが2023年度は、暴力が10パーセントに減少し、暴言が39パーセントと最多になっている。 暴言もパワー・ハラスメントも、「『暴力』の相談よりも不適切行為かどうかを判断するのがより難しい」と、同協会は指摘している。 データを見る限り、たしかに身体的な暴力は減ったかもしれないが、より目に見えづらく、グレーゾーンに近いものに姿を変えているように思えるのだ。 ● 選手と対等に話す 関係を築かなかった ほかにも、競技のレベルが上がれば上がるほど、パワハラ問題も多くなるということを示すデータもある。競技レベルが上がればパワハラ問題も増加するということは、勝つことが優先されるなかで、指導者と選手とのあいだに大きな「ボタンのかけ違い」が生じていることを示していると思う。 そもそも指導者は、勝つという結果を出せばそれでいいのだろうか? 結果を出すのは大事なことだ。でも、結果重視が行きすぎ、選手本人ではなく、選手たちが出した結果しか認めないのでは本末転倒だ。