初代MINIクロスオーバー オール4はファン待望の4ドア・4WD車だった 【10年ひと昔の新車】
1.6L直噴ターボエンジンと相性のいいボディサイズ
MINIクロスオーバーでオール4は、1.6L直噴ターボエンジン搭載車のクーパーSにのみ組み合わされる。最高出力184ps/最大トルク240Nm(オーバーブースト時は260Nm)を発揮するこの直4ターボエンジンは、ほかのMINI、つまりハッチバックやカブリオレ、クラブマンのクーパーSにも搭載されているが、持てるパフォーマンスを存分に使い切れるということでは、ボディが大きく、車重は増えているが、MINIファミリーのなかでもクーパーS クロスオーバーとの相性が一番いいと思っている。ワインディングでの姿勢変化の少ない走りや高速走行時の直進安定性は、ホイールベースがハッチバックMINIに比べて長くなっていることによりさらに増しているからだ。 試乗のステージに選ばれたのは3月初旬の北海道である。札幌市内の路面状況の変化が多い市街地、高速道路、林間コース、そしてラリージャパンにも使われたクローズドのオフロードコースなどが用意されていた。装着されたスタッドレスタイヤはダンロップDSX-2、タイヤサイズは標準装着サイズの205/55R17である。 MINIクロスオーバーのキーを渡され、荷物と撮影機材を積み込み試乗に出発するが、外は生憎の、いや絶好の大雪。路面はミラーバーンではなく、新雪の走りやすい状態であった。 最初は、慎重に様子を見ながらの試乗だったが、街中のストップ&ゴーや曲がりの角、コーナーをひとつふたつとクリアして慣れてくると、札幌市内では、気がつけば地元ナンバーと同じペースで走っていた。これはDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)の効果も大きいのだろう。挙動がほとんど乱れずに思ったラインどおりに走ることができるため自然とまわりの流れに乗って走っていたようだ。 さすがにゴーカートフィーリングを味わうことはできないが、雪道の走行に常識的なペースでの走る、止まる、曲がるに不安はまったく感じられず、オール4の実力を存分に味わうことができた。 クローズドのオフロードコースでは、急発進、急ブレーキ、急ハンドルなど公道では絶対にタブーとされることを繰り返したが、四輪が力強く雪を掴みハンドルを切った方向に進もうとしているのがよくわかる。挙動は乱れる。しかし、そこからすぐにクルマを安定させる方向に向かい、コントロールできる状態への復帰が早いので安心して走ることができるのだ。 MINIクーパーS クロスオーバー オール4は、どんな雪道でも終始安定したドライブができるということは、雪深い林間コースでも確認できた。かなり深い轍のあるコースではあったが、危ないと感じる場面を経験することもなく〝楽に〟走ることができ、〝楽しさ〟さえ感じる余裕もあったほどだ。 試乗中、道産子からMINIクロスオーバーはかなり視線を浴びていた。彼(彼女)らは、雪道における4WD性能を我々以上に厳しくチェックしていたようである。そしてその優秀さに驚いていたように私には感じられた。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:永元秀和)
MINI クーパー S クロスオーバー オール4 主要諸元
●全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm ●ホイールベース:2595mm ●車両重量:1460kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1598cc ●最高出力:135kW(184ps)/5500rpm ●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1600-5000rpm ●トランスミッション:6速AT ●駆動方式:4WD ●車両価格:379万円(2011年当時) ※6速MT仕様は車両重量1440kg、車両価格366万円。 ※オーバーブースト機能作動最大トルクは260Nm。
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