紅白初出演のこっちのけんとが大号泣した“兄の出演作”とは「病気を受け入れる一押しになった」
兄・菅田将暉と「お互いに認識していると思う」こと
――1stシングル「Tiny」はお兄さんである菅田将暉さんのことを歌った曲です。これはさまざまなインタビューの場で必ず聞かれていることだと思いますが、同じアーティストとして菅田さんはどういう存在ですか? こっちのけんと:とても尊敬しています。僕ら兄弟の特性を勝手に分析してみるなら、僕はもともと歌がちょっと得意だったからできているタイプ。兄は得意かというとたぶん不得意。なのに、好きだから極められたというタイプだと思うんです。僕はボイトレに行ったこともなければ、音楽を学んだ経験もない。兄の音楽には絶対に辿り着けない。それをお互いに認識していると思います。 兄は誰にも真似できない努力の先で出せる熱い歌があります。僕は歌うことが得意だからこその内容の濃さと冷たさみたいなものをあわせもっている。アーティストとしての兄をヒントにしつつ、でも真似したらダメだなという感覚があります。 ――主演映画『共喰い』(2013年)の青山真治監督が菅田さんに放った音楽的なアドバイスが、菅田さんの俳優人生を変えた言葉として有名ですよね。「お前の芝居はまだ1/4拍子なんだよ。ミュージシャンは1/16まで考えなきゃいけない」と。 こっちのけんと:ありましたね! 僕はその言葉を、細かく裏拍を感じなければならないということだと解釈しています。アカペラでたとえると、アカペラはリズム隊が楽器でもなければ、クリップも耳から鳴っていません。みんなで音を感じなくてはならない中で、表だけで感じると絶対にズレてしまう。だから、もっと細かく感じることを繰り返していました。青山監督から兄へのアドバイスで、そうか演技も同じなんだと思いました。 ――青山監督にとっては大学の先輩である黒沢清監督の『Cloud クラウド』に主演した菅田将暉さんは今年の名演のひとつだと思います。個人的には、以前黒沢監督の現場で美術スタッフをやっていた経験があり、まさか青山監督作の代表的な俳優である菅田さんが黒沢組に出演したということが感動的でした。 こっちのけんと:えっ、黒沢組のスタッフをやられていたんですか(笑)。面白いつながりですね。そうですね、兄にとって青山監督は大切な存在でしたから。