「全人代」と「中国共産党大会」の違いは?
中国で毎年3月に開かれている全国人民代表大会(全人代)が閉幕しました。日本から見ると、中国の政治体制はなかなかわかりづらいのではないでしょうか。全人代は一般に、「中国の憲法で最高の国家権力機関と定められており、日本の国会に相当するもの」と説明されます。しかし、中国の政治を事実上握っているのは中国共産党。そして、中国共産党の最重要事項を決定する会議が「中国共産党大会」、いわゆる党大会です。 いったい、全人代と党大会にはどんな違いがあるのでしょう? 両者の違いをみてみましょう。
中国共産党大会が事実上の「最高機関」
中国共産党大会とは、中国共産党の最重要事項を決定する会議です。5年に1度開催され、党員による事前選挙で選ばれた代表者が参加します。任期は5年間で、2012年11月に開かれた第18回大会には2270人が参加しました。 そもそも中国共産党は、実質的に中国の一党独裁体制を維持している党です。党内部の仕組みはピラミッド型になっており、全党員のひとつ上のランクに「全国代表大会」があり、さらにその上に「中央委員会」、「中央政治局」、「常務委員」、「総書記」があります。それぞれのメンバーも同大会で選出され、第18回大会では、中央委員会=205人、中央政治局=25人、常務委員=7人、総書記=1人(習近平)が選ばれました。 中国は事実上、中国共産党が指導しているため、中国共産党大会は事実上の最高機関と言われています。ここでは、同党の基本方針決定や党の憲法に当たる党規約の見直し、中央委員会・中央紀律検査委員会の選挙など、さまざまな重要事項を議論・決定します。
全人代は最高の国家権力機関
一方、全人代は年に1回、毎年3月上旬から中旬にかけて10日間ほど、北京の天安門広場近くにある人民大会堂で開催されます。 議題に上がるのは、その年の政府の政治・経済の運営方針を示す「政府活動報告」や法律の判定と改正、予算案の審議、承認など。ほかにも、国家主席の選出、憲法改正、法律制定などの権限を持っています。 しかし、全人代は「最高の国家権力機関」といわれているにも関わらず、国民が代表者を直接決めることはできません。中国の行政区分は、主に省(または直轄市)、県、郷(または市など)からなっており、各クラスで人民代表大会が作られています。郷の代表が県級代表大会のメンバーを選出→県級代表大会が省級代表大会のメンバーを決定→省級代表大会が全人民を決めるといった構造になっているのです。 国民の投票によって決められるのは、末端に位置する公職者のみ。さらに、低いレベルの代表を選出する際には、中国共産党が深く介入しているため、党の推薦を受けていない「独立候補者」が当選するのは難しい状況です。 このほか、香港・マカオの特別行政区の代表、少数民族の代表、人民解放軍の代表が加わり、約3000人の全人代が開かれます。任期は5年で、解散制度は設けられていません。