ペダル配置は「BAC」!? 約百年前のベントレー「オールド・マザー・ガン」で公道を走るための作法を徹底的にお教えします
歴史的なクルマを次の世代に引き継いでいくために
97年前に製造されたこのオールド・マザー・ガンでの公道初走行はかくして終了したが、クルマ自体はじつに堅牢でまったく問題なく走れることがわかったことが何よりの収穫だった。涌井氏もこれまで自身で所有していながらもこのモデルは「恐れ多くて」公道を運転したことはなかったという。このような機会に多くの人にこの歴史的なクルマの動いている姿を見ていただけたことも大きな収穫であろう。 「W.O.ベントレーの考えを理解するためには実際にクルマに乗ることが大事」 と涌井氏はいつも語るが、今回の同乗体験で感じた音、振動、匂いを通じてW.O.ベントレーの目指していた「良いクルマ、速いクルマ、クラス最高のクルマを作る」という想いを体感できた気がする。そして、このクルマを操る涌井氏の一挙手一投足にバーナートとルービンの姿を重ね合わせ、彼らの挑戦もほんの一部を追体験できた。 クラシックカーを持つということは、そのプロダクトそのものに愛情を注ぐとともに、そのクルマの歩んだ道のりや、前オーナーの想いへの敬意、そして当時の空気感までも次の世代に正しく引き継ごうとする情熱が必要なのだろうと、このラリーの参加者たちの姿を見て感じた。 オールド・マザー・ガンは今回公道初走行として注目を集めたが、これから本格的に継承プロジェクトを進めてゆく。4年後の2028年はこのクルマがル・マンで優勝してからちょうど100年を迎える節目の年となる。この100周年をこのクルマが新しい家族のもとで幸せに祝われることを心から願っている。
横倉 典(YOKOKURA Tsukasa)
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